保護猫、飼ってます。





れおの笑顔は、時々作っているのがよく分かる。本当に楽しいんだと思える時もあれば、飼い主の機嫌を伺って合わせた笑顔なんだと察する時もある。俺も同じだ。



サークル仲間の表情を見て、今日はこの場にいない方が良いんだと察して、〝教授に呼ばれてるんだった。ごめん、今日は帰るわ〟と出て行く。


誰のための遠慮なんだろう。自分のため?笑顔を作ることで、自分を守っているんだとしたら、答えが分かっているのに認めたくなくて逃げているんだと思う。自分の憑依に近いれおを見て、そう気づいた。ださい笑顔だ。




毎日静かで暗い影を作っていた河西家に少しの光が入って1日、3日、1週間。手抜きの男飯でも、〝美味しい!〟と目を輝かせて感想をくれるれお。俺自身も目の前に明るい表情があると、毎日に張り合いが出る。


俺に向けられる純粋な明るさを守りたくて、カフェに行くために人生を過ごすことから、れおのために頑張りたいと思うようになった。これは俺とれおの境遇が重なるから。れおを助けることで俺が俺を助けることにもなる。




「祥夜ー!」


「ステイ!」


「…分かった」





毎日に張り合いが出たのは良いことなんだけど、やたら引っ付いてこようとするれお。顔の前に手のひらを見せると、途端にしゅんとなって止まる。効果的で有難い。


隙があったら腰に巻きついてきて、ベタベタしてくる。まるで彼女でもできたみたいに。




「祥夜。これ飲んでも良い?」


「コーラ?俺の飲みかけだけど」


「飲みたい」




あとは、俺が食べたもの、飲んだもの全てが初めてのようで、食べたい飲みたいと毎回言ってきては、必ず中途半端に放置されたものに興味を示す。




「祥夜が口つけたもの、僕も口つけたい」




そして、何とも勘違いしそうな変な言い方をしてくる。たまに、俺の口の端にご飯粒が付いていると、絶対に気づいて取ってくれるけど、それも手で取ってくれたら良いのに、猫みたいに舐めて取ろうとする。その度に〝ステイ!〟と叫ぶ。





「そんなに俺が食べたものに興味ある?」


「食べたものっていうか…、祥夜に興味があるだけ」


「…は?」


「好きな人の好きなものって、同じように好きになりたいでしょ?」




当たり前のように〝好き〟という言葉が出たけど、れおは俺が男だと認識しているだろうか?それとも、れお自身が男だと認識していない?




「えっと…、俺は男で、れおも男」


「うん」


「…え、分かってる?」


「分かってるよ」


「じゃあ、好きって言った意味、分かってる?」


「分かってるよ」


「分かってないよな?」