れおとの同居生活が始まり、キャットフードとまたたびは、保護猫カフェに寄付した。当然理由を聞かれたけど、言葉を濁して答えた。上手く答えられないから聞かないでほしかったけど、察してもらえるわけもなく。
年齢は自分でも分からないらしく、分かっているのは〝れお〟という名前だけ。しかも俺がカフェで付けた名前だから、突然この世に現れた記憶喪失の青年ということになる。
「好きな食べ物とかは?好きな匂いとか」
「キャットフードは食べたけど、不味すぎて食べ物じゃなかった。好きな匂いは…。祥夜の家の匂い、好きだよ。落ち着くし」
「ケージから出ずに、叫んだくせに」
「あれは、人間になるところを見られないように、僕が仕組んだの」
猫だったら聞けなかったこと。面白いことを聞けた。おかげで服がベトベトになったけど。
「じゃあ他に、猫の時に覚えてることとか。きっかけがあったら、飼い主とか家族とか分かるかもしれないじゃん」
「家族は…、思い出さなくて良い。祥夜とずっと一緒にいる」
「えー!?ずっと一緒も困るな」
「僕は困らないよ」
猫は呑気で良いな。あ、元猫か。
上半身を上下にバウンドさせて、困惑する俺の表情を楽しむれお。うねった髪同士がほつれているのを見つけて、解こうと手を伸ばす。
「うわっ…」
ネグレクトで受けた癖なんだろうか。近くに手が伸びるだけで体を縮こめて、震え始めた。
「ごめんごめん」
「僕こそ…」
手を引っ込めるとすぐに震えも止まり、何もなかったかのように、強がってニコニコと作った笑顔を俺に向ける。



