保護猫、飼ってます。




数ヶ月後、保護猫の飼い主申請も無事に終わり、大学の近くに借りているアパートに、れおがやってきた。最大威力でかけた冷房も効かないくらい古びていて狭いアパートだけど、家賃の安さで選んだ快適な俺のオアシス。


迎える前から、猫グッズを買おうとはした。ただ、1人暮らしの部屋はそこまで広くなく、キャットフードとまたたびくらいしか買い揃えられなかった。キャットタワーは、俺の生活区域が狭くなるから買えず。




「…まぁ、なくても困らんよね」




1匹のために豪華に迎えすぎるのも、違う気がして。ケージの中でぐるぐる回り続けるれおは、嗅いだことのない俺の家の香りに動揺して、さらに回転を上げる。




「れお、回りすぎ。ふらふらになるぞ」




ケージのドアを開けて、無理やり出そうとせず様子を見る。俺が緊張したら、きっとれおにも伝わるから、いつも通りを装う。ケージから顔だけを出して、フローリングに鼻を近づけているのを確認して、キッチンに足を向けた。


太陽の下にいるだけで汗が湧き出てくる不快な季節、猫は汗をかかなくて良いよなと羨ましがりながら、冷蔵庫から出したキンキンに冷えたコーラで喉を潤した。




「ニャッ、…アー!」


「何!?」




ケージの中から初めて聞いた、叫びに近い鳴き声。驚いて、口に含んだコーラを溢してしまった。ペットボトルからも飛び出たものだから、手はべちゃべちゃ、服もベトベト。小さい鳴き声しか聞いたことがないし、まだこの家に慣れないのは分かるけど、俺がコーラを飲んでない時にしてほしかった。





「もう…。汗かいてたから、ついでだし良いんだけどさ。れお、動くなよ」




これだけ暑いなら、午後の今から洗濯して外に干しても乾きそう。れおから少し離れてベトベトになった服を脱ぎ、洗濯機でまわした。10分ほどで終わる洗濯。




「れおと話でもするか」




少しでも早くこの家に慣れてもらって、ネグレクトの傷を癒してあげたい。猫カフェで満足していた俺が、家に連れて帰りたいと思えた、愛しい猫なんだ。特別な思いがある分、愛情もたっぷり注いであげたい。


新しい服を着てれおのいる部屋に戻ると、ケージにれおの姿がなく、おまけにカーテンが大きく揺れていた。暑くて冷房をつけていたから、窓は開けていないはず。ジトっとした温い風が通り抜ける。部屋の気温が一気に上がり、背中には熱気が籠った。