解散していく上司たちにのまれて、足も時々もつれながら帰る家の方向に迷っていると、誰かに肩を組まれたような抱き留められたような。
「これはさすがにセクハラっすよ(笑)」
飲み会の席で勢いは、ほどほどにしないと。抱き留められた方に向くと、犯人はれおだった。いつもみたいに腰に巻きついて、上目遣いで俺を見ている。
「…え、何でれおがいるの?家から出たの?」
「遅かったから、迎えに来た」
「そんなに遅くないでしょ」
そうは言ったものの、れおが言うならそうなのかもと携帯の時計を見ると、確かに遅かった。10時なら、れおとテレビを見ながらウトウトしている時間。
「ごめん…。時間見てなかった」
「河西くん、帰らないの?お、誰?…弟くん?」
「違います。祥夜の彼氏です」
「…彼氏?あ、そういうこと…」
「違うんです。そう言ってますけど、勝手に言ってるだけなんで、気にしないでください。れお、帰るよ」
酔いなんて覚めた。一瞬見えた、俺とれおに対する上司の冷ややかな視線。驚きと戸惑いと軽蔑すら感じた。れおは何も思わずに言ったけど、世間にはまだまだ浸透していない関係性でもある。
「彼氏とかやめてよ。勘違いされる」
家に帰る道を一緒に歩きながら、れおを見ずに少しだけ冷たい態度で突き放した。実際彼氏ではないし、一緒に住んでいるだけだから、否定したことに引き目は感じていない。
「勘違いじゃなくて、本当にそうでしょ?僕は祥夜のこと好きだし。それに、僕じゃない誰かが祥夜と話してるの、許せない」
半歩後ろを歩くれおが、俺の小指と薬指を握ってきた。れおの口から出た、〝嫉妬〟に思わず足を止める。
「それって嫉妬?」
「僕のこと、いつ好きになってくれる?」
「答えになってない」
ぐいぐい来るれおと、嫉妬から逃げる俺。ちぐはぐなのに、成り立ってしまっている。れおの質問に、もう好きだよなんて言えない。今言ったら、絶対に酔っ払った勢いと思われる。
「…好きな人に嫉妬くらい、するよ」
れおの心の声が弱々しく聞こえてきて、ドクンと心臓が大きく音を立てた。れおの言葉に返事も相槌もせず、また歩き出す。彼氏とかじゃないけど、れおを好きになっているのは確か。今れおと目を合わせたら、俺の冷たい態度が嘘になるから、頑なに首を回さなかった。
指を握られたまま、れおは俺の半歩後ろを付いてきて、時々後ろに引っ張られて振り向きそうになるのを我慢して、2人とも無言で帰宅。
玄関の扉を開けると、自然に離れていったれおの手。寂しさを感じながら、先に中に入ったれおに続いて、そのままベットにへたり込む。日々れおに翻弄されていて、手の上で転がされている気分。
それでもその手から抜け出す理由もなく、沼へと落ちていっている。いつもハイテンションなれおだから、冷静に気持ちを伝えられると反応に困るし、迎えにきてもらってから気まずさが消えない。



