保護猫、飼ってます。





「…出会えたと、思います」


「あら、良いね。友情?恋?」


「教授…、卒論見てほしくて来たんですけど」


「良いじゃない、聞かせてよー。こういうの、大好物だから」




足は重かったけど、教授とここまで深く話せたのも初めてで、今日だけは大学に来て良かったと思えた。



しつこい教授をどうにか引き剥がして、大学を出たのは5時。今から会社近くのお店に向かうと、ちょうど1時間。ギリギリ間に合う。




「すみません。お邪魔します…」


「おー、河西くん!待ってたよ!センター座って!」


「えぇ…、センターって」




俺に廊下で声をかけてくれたのは、河北さんという俺より一回り体の大きな男の人。河西と河北で、名前がほぼ同じなので、初めは面白がって声をかけてくれたらしい。




「ここまで似てる人っていないよね。性格は似てないけど、頑張って仕事してくれるし、何より仕事への姿勢がインターンって感じの、青々しい感じで良いんだよね」




自覚はなかったけど、インターンらしい青々しさを持ち合わせていたらしい。大学にいると、青春はしない悪目立ちする陰キャ。でも大人にはなり切れていない、背伸びした子ども。




「お酒、飲める?注いでも良いかな?」


「あ、お願いします」


「パワハラになってない?」


「大丈夫です(笑)」





あの時、隣の席から声をかけてくれた人も俺に話しかけてくれて、初めて話の輪の中心にいる感覚を味わった。俺が一言話せば盛り上がり、笑いが起きる。肩を組まれたり、時には頭を撫でられたり。お世辞でも、飛び上がりそうなほど嬉しかった。




「俺、インターンで開発に入ったんですけど、営業のお手伝いしてから、営業部に入りたいってずっと思ってて…。でも希望して入った部署を移りたいなんて、我儘かなって言えなくて」




程よく頭がぽわっとしてきた頃に、勢いに任せてそんなことを話してみる。すると、みんなが食いついてくれて、ある人は人事にかけ合ってみると言ってくれて、ある人はしれっと営業部にいても誰も気づかないと、大口を開けて笑っている。


お酒の席の戯言かもしれない。これが実現するかも分からない。それでも、お酒を借りて言いたいことは伝えられて、肩の力が抜けた。




「じゃあ、このジョッキ全部飲んだら、営業部入れてください!」


「おお!飲め飲め!そして入れ!」




こうして綺麗に酔ってしまった俺は、営業部に入ることを許されたのかも分からないまま、お開きになった飲み会を出た。




「河西くん、いい飲みっぷりだったよー。お客さんと飲みに行っても、喜ばれそう」




調子に乗り過ぎたかもしれない。真っ直ぐ歩けていないし、いつもの俺の性格とはかけ離れた、ふにゃふにゃの表情をしていると思う。