保護猫、飼ってます。




どいつも、久しぶりに俺を見つけて気まずいのがバレバレで笑える。どうしてそんなに、俺のことを嫌うんだろうか。大学生とは思えない意欲のなさが、チャラチャラしたい時期のあいつらとは正反対で、イライラするとか。多分これで合っているとは思うけど、あいつらに合わせる気はない。


俺も同じように気づかなかった風を装って、教授の部屋に足を向ける。いますのボードが扉にかかっているのを確認して、2回叩くと他所行きの声の高い返事が来た。




「河西です、失礼します」




引き戸を左にスライドすると、俺の顔を見た教授の顔が綻ぶ。〝久しぶり〟という声も、他所行きをやめて酒焼けした掠れた声に変わった。




「卒論を見て頂きたくて」


「うん、良いわよ。どうぞ」




教授の机の向かい側にある、一回り小ぶりな机にカバンを置いて、腰掛ける。データが入ったUSBを渡して、見てもらっている間、窓から見える外の学生たちを観察する。


さっき見つけたサークル仲間は、まだベンチに座って談笑している。俺があの輪の中に入ることは、一生ないだろうと考えながら。




「河西くん、最近インターンはどんな感じ?楽しい?」


「はい。いろいろあって、別の部署の仕事を時間外に手伝ってるんですけど、その仕事が楽しくて。最近は開発より、そっちにやる気があるっていうか…。本当はだめなんですけどね」




楽しいと思えるものに出会えたことが嬉しくて、規則違反とはそういうのは無視してしまっている。でも教授は、そんな俺の言葉に首を傾けた。




「何がだめなの?楽しいと思えるなら、それを極めたら良いだけじゃない。何もいけないことなんて、ない」


「…そうですか?でも俺、インターンだし」


「インターンだから言うこと聞かなきゃいけない?あなただって、立派な社会人よ。意見を言うのは当然じゃない?」




教授からは、もっとお叱りが飛んでくると思っていた。俺を庇うような、そんな人じゃないと思っていたから、目が飛び出そうになった。




「そんな驚く?(笑)」


「ごめんなさい…。教授がそんなこと言ってくれる人だと思わなかったから」


「あなたこそ。これが楽しいとか、これがやりたいとか言わない子だったのに。この数ヶ月で変わったわね」




パソコンと俺を見比べて、笑いかけてくれる教授。れおと出会って、営業の人に声をかけてもらえて、仕事が楽しいと初めて思えて。確かに変わったと思う。仕事への向き合い方も。




「良い人に出会えたの?」


「え?何でそうなるんですか?」


「大体そうでしょ?自分が変われるのって、自分で変わろうと努力して変わる人もいるけど、珍しいから。良い人に出会えたおかげで刺激になって、自分が気づかない間に良い方向に向いていくの」


「良い人…」




真っ先に浮かぶのは、れお。良い方向に進んでいるかは別として、今まで俺だけではできなかった経験ばかりしている。