保護猫、飼ってます。





「仕込んでた唐揚げは、明日にお預けだな」




冷蔵庫に、昨日の夜タッパーにタレにつけた鶏肉があるのを思い出して、華金だったことに気づいた。週末の楽しみに、金曜日の夜ご飯は少しだけ豪華にしている。定時で帰ることを当たり前のように想定して作っていたけど、腕にはめた時計は珍しく8。この時間では、フライパンに油をひく気力は残っていない。


スーパーに寄って、お弁当を買った。れおの分も買おうとして、ご飯も食べずにきっと俺を待っているに違いないと、焦って買い物を済ませる。スーパーを出ると、やはりさっきの雲が雨を降らせていて、ずぶ濡れになって帰宅。




「ごめん、ただいま!」




玄関の扉を開けると、目の前で三角座りをしているれおと目が合った。俺の声を聞くと、一瞬で目に大粒の涙を溜めて、腰に飛びついてきた。スーパーのレジ袋が手からすり抜けて、床にガサッと落ちる。




「どこ行ってたの…。捨てられたかと思った」




俺はご飯が遅くなったから、それに焦って帰ってきた。れおは、ご飯のことより俺だったらしい。そんなこと、考えている場合じゃなかった。俺が帰ってくるまで、どれだけ不安だっただろうか。




「ごめん。会社の違う部署でトラブルがあって、手伝ってたら遅くなった」


「怖かった…。また、同じように…」




俺の腰にまわった手が、震えているのが分かる。主人を待っても帰ってこなかった、安心できる場所もなかった。そんなれおが、俺といたいと言ってくれたのに。俺自身の後悔も消すように、しゃがみ込んでれおを抱きしめ返した。




「大丈夫。ここにいるから。どこにも行かない」


「…本当?」




背中をトントンと叩くと、れおの手の力が増して、ズズッと鼻を啜る音がして俺から離れた。目が真っ赤になっている。


れおは本当に俺のことが好きで、ここに来てくれたんだ。真っ赤になっても俺を見つめる、真っ直ぐで潤んだ目に、れおの想いを受け止めたいと素直に思えた。




「祥夜…。1つお願いがあるんだけど」


「お願い?」


「今日は一緒に寝てくれる?」




ベットを指さして、上目遣いで俺の様子を伺う。即座に嫌がるところだけど、れおの想いを受け取ると決めた今、首は迷わず縦に動く。俺自身も、れおの寂しがる表情に動かされたものがあるし、不思議とれおを目で追いかけている。飼い猫を愛でている感覚。




「でも暑いから、あんまり引っ付くなよ」




とは言ったものの、1人用のベットを男2人で使うには案外狭く、密着してれおは壁側に、俺はベットから落ちないように、れおに腰に腕をまわしてもらって寝た。


暑くはなく、暖かい。くすぐったさと、ふわっとした安心感があって、れおも俺に抱きつくとすぐに寝息を立てていたので、それにつられて俺もすぐに眠った。