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部屋の外は、青々としげった景色。
雨でも降ったのだろうか。
濡れた若葉のにおいが、さやかなそよ風に乗って格子の透かし窓から入り込む。
射し込む陽光は、これから肌がひりつくほど強く照るだろう。
「夏……か。昨日まで冬だったのに」
身支度を終えるころ。
ひとり残された部屋で、ぽつりとつぶやく。
「入るぞ」
それからすこしもせず、部屋の扉が開け放たれた。
コツコツと履音を立て、夜色の髪の青年が姿を現す。
「……ご足労痛み入ります、東宮さま」
わたしはひざを折り、深々と叩頭する。
「顔を上げろ」
昨夜も耳にした声が、頭上にふり注ぐ。
一切の隙を感じさせない、低い響きだ。
「はい」
顔を上げろと言われたら上げろ。
踊れと言われたら踊れ。
言われたとおりにするだけだ。
居住まいを正せば、自然と視線が合う。
(やっぱり……きれいな顔立ち。そして、冷たいひと)
東宮さまに、獣の耳や尾は見られなかった。
ひと目見ただけでは、わたしとなんら変わらない人間そのものだ。
「現状を説明してやる」
東宮さまはそう言うやいなや、護衛らしき兵士たちを下がらせた。
逃げ出したところで、入り口で待ちかまえた屈曲な男たちに捕まるだけ。
ならばわたしが選ぶべき最善の道は、東宮さまのお話に傾聴することだ。

