桃娘蜜月伝〜虐げられた姫は、時をこえ狼帝の孤独を溶かす〜

 なんだか、まぶしい……

「んん……」

 気だるいまぶたを持ち上げる。
 すると、おぼろげな視界に人影が映り込む。
 夜色の髪をした、美しいひと。
 彼の腕に抱かれて、わたしは陽のあたる寝台に横たわっていた。

 あたたかい……
 なんてすてきな夢なのかしら。

「ふふっ……宵月(シャオユェ)さまぁ」

 うれしくなって、すり寄ると。

「……気がついたのか、李花(リーファ)

 唐突に、宵月さまが目をかっ開いた。
 月色の瞳はまばたきひとつせず、わたしを見つめている。

「李花……」
「あら……?」
「李花李花李花李花」
「あらあら……!?」

 がばり。
 苦しいくらいに抱擁されては、寝ぼけまなこも覚めるというもの。

「この馬鹿っ! おまえは本当に、無茶をして……っ!」

 言葉を詰まらせた宵月さまが、くちびるを噛みしめる。
 澄んだ月色の瞳から、ぽろりとこぼれ落ちるものがあった。
 ……はじめて目にする、宵月さまの涙。

「宵月がうるさいと思えば、やっぱり」

 呆れたような、それでいて穏やかな声が耳に届く。
 いつの間にだろう。
 寝台のかたわらには、朝陽にきらめく白金の髪の青年がたたずんでいた。

「おはよう、李花ちゃん」
四蓮(スーリェン)さま……」
「……無事で、よかった」

 四蓮さまの紫水晶の瞳も、揺らめいていた。

「……はい。おはようございます、おふたりとも」

 どうやらわたしは、とても長いあいだ眠っていたみたい。
 胸がじんと熱く、きゅっと切なくなるのは、夢じゃないわ。