桃娘蜜月伝〜虐げられた姫は、時をこえ狼帝の孤独を溶かす〜

「この呪縛を、断ち切りたいのです! 宵月さまとともに!」

 月色の瞳が、極限まで見ひらかれ。

「っ……李花……っ!」

 悲痛に歪んだ表情で、宵月さまがくちびるを噛みしめる。

「たしかに、おまえの血は、月夜の発作を軽減させる……だが呪いをとけるという確証は、どこにもない……!」
「確証がなくてもやるんです。一歩をふみ出さなければ、なにも成し遂げられはしません!」

 かつて宵月さまのお祖父さまを苦しめた病を、母さまが救った。
 そのことを、宵月さまが伝えてくれた。
 ならばわたしは、母を、わたし自身を、信じる。
 宵月さまを、信じている。

「宵月さま、ふたつ約束をしてください。ひとつは、中秋節までの残り二週間、この血酒を欠かさず飲むこと」

 気休めでも、それで宵月さまの負担が軽減されるなら、意味のあることだ。

「……もうひとつは?」
「中秋節の夜。わたしのもとへ、かならずいらしてください。──『約束』を、果たしましょう」
「いけない、李花。満月を目にしたら、俺は……」

 月色の瞳は、いまだに揺れ動いている。

「大丈夫です」

 不安が拭えないなら、抱きしめますから。

「わたしを、信じて」

 もうあなたを、独りにはさせない。