桃娘蜜月伝〜虐げられた姫は、時をこえ狼帝の孤独を溶かす〜

「宵月さま、ここ数日はお加減がよろしかったようですね。こちらのお酒が、お口に合いましたでしょうか」
「なにを……!」
「わたしが宵月さまのためにご用意した、特別な果実酒でございます」
「──!」

 宵月さまが血相を変える。
 わたしがなにを言わんとしているのか、察したのだろう。

「そうです。こちらのお酒には、わたしの血が入っております」

桃娘(タオニャン)』の癒やしの力は、その血に宿るという。
 確証などなかった。
 けれど、わたしの血の上澄みを混ぜた酒を口にしたことで、宵月さまの疲弊も軽減されるようになったなら。
 その結果が、真実を証明している。

「俺は、なんということを……」
「宵月」
「血酒を美味と思うなんて……これでは、理性のかけらもない(けだもの)じゃないか!」
「逃げんな」

 顔面蒼白で後ずさる宵月さまを、四蓮さまが羽交い締めにする。
 わたしは卓に盆を置き、宵月さまへ歩み寄る。
 そしてわたしを拒む手を取り、しかとにぎってみせた。

「宵月さま、わたしは可哀想ですか?」
「……は……」
「宵月さまのために傷をつけたわたしは、可哀想に見えますか?」

 宵月さまが押し黙る。
 それもそうでしょう。

 ──このわたしが、可哀想だなんて言わせない。

「宵月さまは、わたしに『守る』と言ってくださいましたね」

 本当に、うれしかった……

「わたしも同じ気持ちです。わたしだって、宵月さまをお守りしたいのです。それは、命を投げ打つという意味では断じてありません!」

 この百年、だれもが呪いに苦しめられ、涙を流してきた。
 宵月さまも、そんな未来を恐れているのだろう。
 けれども、わたしは。