桃娘蜜月伝〜虐げられた姫は、時をこえ狼帝の孤独を溶かす〜

 どれくらい泣いたのだろう。
 わたしが落ち着くまで、宵月(シャオユェ)さまは寝台に腰かけ、付き添ってくださった。

「母君の形見を持ち出した侍女は、相応の処分を下している。……俺の目が行き届かないばかりに、すまない」
「いえ。宵月さまも大変な時期であったことは、重々承知しております」

 ただでさえ満月が近く、心穏やかではなかったはず。
 わたしが眠りこけているあいだに、満月は過ぎ去った。
 その間も、多大な心労があったはずだ。
 事実、宵月さまの顔には、疲労が色濃く浮かんでいる。

「李花、おまえに話さなければならないことがある」

 こぶしを固くにぎりしめ、宵月さまが独りごちる。
 ひとつ深呼吸をしたのち、宵月さまはわたしへ向き直った。

「おまえの母君と……俺たち(ラン)族の、つながりについて」
「……どういうことですか? どうして、わたしの母が急に……」

 困惑するしかないわたしへ、宵月さまは語る。
 にわかには信じがたい、『真実』を。
 
李霞(リーシャ)殿──おまえの母君は、俺の祖父をかばって、亡くなった」