「東宮さま、違うのです! わたくしはただ、東宮妃さまのお部屋のお掃除をと……!」
「言い訳は聞かん。貴様が手を出したのは、李花が命よりも大切に扱う想い出の品だ」
あの声は……湯殿の一件で、宵月さまにお叱りを受けた侍女のひとりだろうか。
たしか、謹慎を言い渡されていたと聞いたけれど……
「即刻荷物をまとめ、出て行け。今日中にだ。──さもなくば、その喉笛を掻き切る」
「ひッ……!」
冷徹な通告だった。
こんなに低く、唸るように憤る宵月さまの声を、聞いたことがない……
「宵月ー、あんま殺気立ってると、李花ちゃんが怖がるからやめなー」
「あ、あの、四蓮さま……!」
わざとらしく四蓮さまが声を上げた、次の瞬間。
部屋の扉が、開け放たれる。
「……李花」
わたしを映した月色の瞳が、大きく揺らぐ。
ばつが悪いわたしは、まごついて。
「その……ご迷惑を、おかけしまして」
「そんなことはどうでもいい!」
耐えかねた様子で声を張り上げた宵月さまが、あっという間に距離を詰める。
そうしてわたしは、まばたきのうちに抱きしめられていた。
「ひ弱な人間のくせに、おまえは!」
「……ごめんなさい」
「ちょっと溺れたくらいで、すぐ死ぬくせに……!」
「宵月さま……」
「……おまえを、失うかと思って、俺は……っ」
わたしを掻き抱く腕は、小刻みに震えていた。
こうなってはじめて、わたしは自分のしでかした事の重大さに気づく。
「ごめんなさい……ごめん、なさい……っ!」
幼子のように泣きじゃくるわたしを、宵月さまは、ただただきつく抱きしめていた。
「言い訳は聞かん。貴様が手を出したのは、李花が命よりも大切に扱う想い出の品だ」
あの声は……湯殿の一件で、宵月さまにお叱りを受けた侍女のひとりだろうか。
たしか、謹慎を言い渡されていたと聞いたけれど……
「即刻荷物をまとめ、出て行け。今日中にだ。──さもなくば、その喉笛を掻き切る」
「ひッ……!」
冷徹な通告だった。
こんなに低く、唸るように憤る宵月さまの声を、聞いたことがない……
「宵月ー、あんま殺気立ってると、李花ちゃんが怖がるからやめなー」
「あ、あの、四蓮さま……!」
わざとらしく四蓮さまが声を上げた、次の瞬間。
部屋の扉が、開け放たれる。
「……李花」
わたしを映した月色の瞳が、大きく揺らぐ。
ばつが悪いわたしは、まごついて。
「その……ご迷惑を、おかけしまして」
「そんなことはどうでもいい!」
耐えかねた様子で声を張り上げた宵月さまが、あっという間に距離を詰める。
そうしてわたしは、まばたきのうちに抱きしめられていた。
「ひ弱な人間のくせに、おまえは!」
「……ごめんなさい」
「ちょっと溺れたくらいで、すぐ死ぬくせに……!」
「宵月さま……」
「……おまえを、失うかと思って、俺は……っ」
わたしを掻き抱く腕は、小刻みに震えていた。
こうなってはじめて、わたしは自分のしでかした事の重大さに気づく。
「ごめんなさい……ごめん、なさい……っ!」
幼子のように泣きじゃくるわたしを、宵月さまは、ただただきつく抱きしめていた。

