桃娘蜜月伝〜虐げられた姫は、時をこえ狼帝の孤独を溶かす〜

「にしても、宵月のやつ、はりきって贈りすぎだろ」
「そうですね。特に衣はもともと持っていた数が少ないので、収納用の行李(こうり)が……」
「持ってくるよ。待ってて」

 やれやれと肩をすくめて、四蓮さまは足早に部屋を出る。
 ひとりになると、積み上げられた贈り物に圧倒されてしまう。

「あら、この衣……すてき」

 そのなかで、ひときわ目を奪うものがあった。
 色は白。裾にかけて薄桃に色づく淡色(あわいろ)の衣で、桃の花が金糸で刺繍されていた。

 ──俺は、淡い衣が似合うと思う。
 ──おまえの舞を、俺に見せてくれ。

 わたしにお返しできることがあるとすれば、舞うことだけ。
 ならばそのときは、いただいた薄桃の衣をまとって、あの方のためだけに舞おう。
 母の形見が、きっと後押しをしてくれるはずだから。

「…………あれ」

 寝台の下にしまっておいた行李のふたを開けて、思考停止する。

「見間違い……」

 じゃ、ない。

「ない、ない……どうして、ないの!?」

 そこにあるべきものが、なかった。
 一瞬にして、全身の血の気が引く。

「宵月さまっ……!」

 もう夢中で、部屋を飛び出した。