桃娘蜜月伝〜虐げられた姫は、時をこえ狼帝の孤独を溶かす〜


  *  *  *


 淡青の空が、どこまでも広がる朝。
 わたしが東宮にやってきて、ふた月を迎える。

「というわけで。李花ちゃんに贈り物でーす!」
「まぁ……!」

 色とりどりの衣に、絹の(くつ)、宝玉の花簪。
 さらには地方特産の茶葉だとか果物だとかが、これでもかとばかりに並べられている。

「『よく食ってすくすく育て』──だってさ。もうちょっと色気のあること書けばいいのにね」
「ご多忙なあいまを縫って、贈り物を見繕っていただいたんですもの。宵月さまには感謝ばかりです」

 四蓮さまから、贈り物とともに文を受け取る。
 文には続きがあり、『追伸 俺は淡い衣が似合うと思う』と短文が添えられていた。

「宵月さま……お仕事が大変なのですね」
「んー、それは建前で、ほんとは李花ちゃんのためってのが本音かな」
「わたしのため、ですか?」
「明日は満月だろ? 前後を含めた三日間、(ラン)族は自制が効きづらくなる。あえて距離を置かなきゃいけないときもあるんだよ。わかってやってくれる?」
「はい……」

 近ごろ、宵月さまは気もそぞろな様子だった。

(宵月さまの優しさに、甘えていたわ……)

 毎晩添い寝していたから、会えなくて寂しい、だなんて。
 ……わたしの、わがままよね。