桃娘蜜月伝〜虐げられた姫は、時をこえ狼帝の孤独を溶かす〜

「宵月さまは、やさしくて、あったかい方ですね」
「俺、が……」
「わたしでよければ、ここにいます。……大丈夫」

 腕を引いて、倒れ込んできた宵月さまを抱きしめる。

「宵月さまの気持ち……教えてくださって、ありがとうございます」
「っ……!」

 わたしの胸に顔をうずめた宵月さまは驚いて、それから、ぼんやりと月色の瞳を細めた。

「おまえは……俺を、拒絶しないのか」

 へたりと、黒い三角耳が伏せる。

「甘い香りがする……」

 すんすんと嗅がれたあとは、とろんとした表情ですり寄られる。
 小動物みたいで可愛らしいと言ったら、怒られるだろうか。
 そんなとりとめもないことを考えていた、この夜。
 宵月さまの腕が、わたしの背に回されて。

「……李花」

 はじめて、名を呼んでもらえた。
 たったそれだけなんだけど。

「はい、ここに」

 胸の奥のやわいところにふれられて、ふわふわとした気分になった。