「宮子、宮子……。俺はもうだめだ。波止場がいないと耐えられない。ここで殺してくれ」
波止場と『一緒にいられない』と言われてから、二日が経過した。
俺はもう限界だった。息も絶え絶えの状態で登校し、朝の教室で宮子にこんなことを言う程度には。
「とうとうそこまで行ったんだ」
「殺してくれ……」
「てか、机に突っ伏すのやめてくんない? その顔、見えないんだけど。愚痴るならせめて顔だして愚痴ってよ」
首元を掴まれて無理矢理顔を上げさせられた。カツアゲみたいな状態で宮子が俺の顔をガン見してくる。
「波止場が俺と一緒にいてくれないって……。もう生きる意味がない……」
「その話、昨日も一昨日もしたじゃん。何回も言ったけどちょっと離れたくらいで大袈裟。だいたい毎日毎日ベタベタしてさぁ、今までがおかしかったんだからね? あんた、波止場のこと家まで起こしに行ってるんでしょ? で、一緒に昼食べて、一緒に帰ってるんでしょ? 下手したら親より一緒じゃん」
「仕方ないだろ。だって一緒にいたかったんだよ」
「限度ってものがあるでしょ、限度」
ばっさり切られる。頭を抱えた。
一緒にいられないと言われてから、俺たちは一緒に行動していない。
一応波止場の両親を心配させないよう朝は起こしに行くものの、家を出ると波止場は先に学校へ行ってしまう。
昼は昼でどこかに消えていくし、放課後は先に帰ってしまうしで、一緒にいるタイミングを悉く失っていた。
自分の隣に彼がいないのは寂しく、苦しく、自分の身体のパーツが一つ足りないような耐え難い喪失を感じる。波止場がいないだけで俺は上手く生きられない。
「でも、あんたたちがバラバラに行動してるせいでみんな心配してるけどね。あんたたちって入学してからずっとワンセットだったし」
宮子がちらりと教室を見た。確かにクラスメイトたちから慮るような視線を感じる。
「今のうちに王子様とお近づきになろ〜〜って狙ってるやつもちらほらいるみたいだけど」
「それはそれで困る……。俺、波止場一筋だから申し訳ないし……」
「モテる奴の発言だね」
「そりゃ、美少年だからな」
話しながらも気は落ちていく。勢いのままもう一度机に突っ伏しそうになり、宮子に頬を掴まれた。
「伏せるな。顔が見えないから」
「ぐっ、この面食いめ……」
そう言ってみれば、宮子は悪役のように唇を釣り上げて笑う。
「あたしが死ぬほど面食いだから、あんたの面倒な惚気と愚痴に付き合ってあげてるんだけど?」
「いつもありがとう、宮子様」
手が離れて自由になる。もう机に突っ伏さないように気をつけながら、掴まれた頬を軽くさすった。
「で、なんだっけ? 波止場に『もう一緒にはいられない』って言われたんだっけ?」
「違う。しばらくは一緒にいられない、だ」
「はいはい。それで、そう言われる心当たりは?」
問いかけられると、上着のことが思い出される。傷口を抉るような覚悟を持って口を開いた。
「波止場のジャージ、勝手に着た……上着だけだけど」
「それじゃないね。次」
宮子の言葉が俺の覚悟を叩き落とす。ショックだった。
しかし次と促されてもあまり思いつかない。少し考えてから、できるだけ小さな声でその名前を囁いた。
「……あのさ、三国って女の子知ってる? 多分、同じ学年の」
「三国って、三国 円(みくに まどか)? ツインテールですっごくかわいい子」
「そうそう、その子」
波止場の様子がおかしくなったのは、彼女との話を終えて戻ってきてからだ。上着の件が関係ないなら、彼女が関係しているのかもしれない。
けど、彼女が俺を拒絶する原因だとは思えなかった。見知らぬ女子生徒に「あいつのせいだ」と思いたくないのもあるし、波止場が俺から離れるなんて大きな選択をする時、関係の薄そうな女子生徒が関わっていたとは思えない。
「もちろん知ってる。何せ、マジで本当超かわいいからね。あたしの美少女フォルダに入ってるよ。一組の子で、かわいくてお淑やかで、お姫様でって有名だけど?」
「確かにかわいかった」
桃色の唇や守ってあげたくなるような小さい身体。確かに宮子のいう通りかわいくて、お淑やかで、お姫様だ。
「うちの学年の王子様があんたなら、お姫様はあの子。どっちも恋人いないのに告っても振るばっかりで、大変らしいけどね?」
「ま、俺は波止場一筋だから」
しかし、十二年間恋し続けた相手に今は拒絶されている。気持ちがずぶずぶ沈んできた。
「……とにかく、拒否されてる理由もわかんないんでしょ? 大体あんたは波止場にちょっと距離置かれたくらいで落ち込みすぎ。逆にあれでしょ、二人の関係を盛り上げるスパイス的なあれになるでしょ」
宮子は慰めるように声色を和らげた。俺もそれに応えるよう笑おうとしたが、上手く笑えない。
宮子が深く、深く、全身の空気全部を吐き出すみたいにため息をついた。
「……わかったわかった。あのさ、今度修学旅行あるじゃん?」
「え? あ、あぁ……そうだな」
彼女の言う通り、あと二週間ほどで二泊三日の修学旅行がある。行先は京都だ。
しかし急にそんなことを言われても話の繋がりが見えない。首を傾げると、もう一度ため息をつかれた。
「一日目って、班ごとに観光でしょ? あんた、波止場と同じ班になれば?」
「……なるほど! それなら一緒にいられるな!」
思ってもなかったその提案に光明が差した気がした。修学旅行の非日常的な雰囲気に紛れれば、勢いでドーンと解決できるかもれない。
しかし、すぐにその提案の欠点に気付いて膝から崩れ落ちた。
「班って修学旅行前に決定するんだから、結局今のうちに誘わないと駄目じゃねぇか……」
班決めはまだなので詳しいルールは不明だが、先輩たちは「修学旅行の班は仲のいい奴六人で組んで、修学旅行前に名簿を提出する」と言っていたはずだ。
つまり、結局波止場に声をかけなくてはいけない。頭を抱えると宮子がネイルの施された爪で机を叩いた。
「じゃあ今すぐ誘えば?」
提案が段々投げやりになってきた。
「なんで一緒にいられないか、わかんないのに!? それができるなら最初からそうしてるに決まってるだろ!」
「理由きいても答えてくれないなら、考えるだけ無駄だって。ほら、対面で言えないならチャットで言えばいいじゃん」
「そういう問題じゃ……」
尻込みする俺を前に宮子がばっさりと言い放つ。
「じゃあこのまま関係が自然消滅してもいいんだ? へー、波止場がほかの女と付き合ってもいいわけ? 波止場がどっかいってもいいわけ?」
「……よ、良くない……」
このまま関係が切れるのは、いちばん恐ろしい。
でも宮子のいう通りにすべきか、波止場の出方を待つべきか判断できない。波止場との関係が狂ったことなんて、一度もなかったのだから。
言いようのない不安に駆られていると、宮子が額をつついてきた。
「大丈夫だって。波止場があんたのこと嫌いなわけないじゃん。むしろあんたのことしか考えてないと思うよ。傍から見てるだけでもそう思うもん」
「そ、そうか……?」
「いつも一緒だとわかんないのかもね。ほら、あたしを信じて、早くチャット送って!」
バシバシ机を叩かれ、言われるがままチャットを立ち上げる。
「ほら早く入れて。修学旅行で同じ班になろうぜって。ついでに自由行動も一緒にいようよって」
「ちょっと待て、心の準備させろ」
「ビビるな。さっさとやれ」
髪を軽く引っ張られた。仕方なく『修学旅行、あるだろ? 班は同じでもいいか?』と打ち込む。
その瞬間、宮子が送信ボタンを押してしまった。
「ぎゃあ!!」
チャット画面に俺が打ち込んだ文字列が表示される。でかい悲鳴が出そうになるのを慌てて飲み込んだが、膝はありえないほど震えていた。
「送れた? 送れてるね。これ、消さないでね」
「う、あ、あぁ……」
震える俺を宮子が見つめる。その瞳の奥に優しい感情が見えた瞬間、変な声は引っ込んだ。
これでよかったのかはわからない。でも、彼女は俺を心配してくれている。そう思うとこれ以上、彼女の感情や好意を無下にできない。
それに彼女の言う通り、うだうだ悩んでいても仕方ない。そもそも喧嘩とか不仲とかなら、ほとんど喧嘩したことない俺より宮子の方が詳しいだろう。彼女に従うのが一番だ。
「……ありがとう、宮子。お前のおかげだ」
お礼をいえば宮子が僅かに口元を緩めた。柔らかくて、かわいらしい微笑みだった。
「でしょ。じゃあお礼、待ってるから。あたしの欲しいもの、当然わかってるよね?」
「わかってる。俺の自撮りだろ」
「そ」
当たり前のように彼女が頷いたので、俺はインカメを起動しながらスマホを取り出す。
「じゃあ、今撮っていいか?」
「今は元気の無い顔してるから、回復してから一番盛れる画角で撮って。あと衣装は制服以外で。なんならいろんな衣装で撮って」
「……わかったわかった。じゃあ、今度送るな」
ちょっと面倒な気もしたが、今の彼女には逆らえない。なんなら新品の服を買ってから撮ろうかと考えつつ、自撮りの約束をした。
「やった。楽しみにしてる」
無邪気に喜ぶ宮子の横で、こっそり波止場の方を見る。
波止場もこっちを見ており、目が合った瞬間慌てて視線を逸らした。
「(やっぱり、宮子の言う通り完全に嫌われたとは思えないよな……)」
だからこそ、何故彼が「一緒にいられない」と言うのかわからない。
ずっと一緒にいた。これからも一緒だと信じていた。それならなぜ、一緒にいられないのだろう。やっぱり上着を着たせいか?
それとも、あの三国という女子生徒と何かあったのだろうか。
果てのない疑問を抱きながら、俺は宮子の話に相槌を打った。
波止場と『一緒にいられない』と言われてから、二日が経過した。
俺はもう限界だった。息も絶え絶えの状態で登校し、朝の教室で宮子にこんなことを言う程度には。
「とうとうそこまで行ったんだ」
「殺してくれ……」
「てか、机に突っ伏すのやめてくんない? その顔、見えないんだけど。愚痴るならせめて顔だして愚痴ってよ」
首元を掴まれて無理矢理顔を上げさせられた。カツアゲみたいな状態で宮子が俺の顔をガン見してくる。
「波止場が俺と一緒にいてくれないって……。もう生きる意味がない……」
「その話、昨日も一昨日もしたじゃん。何回も言ったけどちょっと離れたくらいで大袈裟。だいたい毎日毎日ベタベタしてさぁ、今までがおかしかったんだからね? あんた、波止場のこと家まで起こしに行ってるんでしょ? で、一緒に昼食べて、一緒に帰ってるんでしょ? 下手したら親より一緒じゃん」
「仕方ないだろ。だって一緒にいたかったんだよ」
「限度ってものがあるでしょ、限度」
ばっさり切られる。頭を抱えた。
一緒にいられないと言われてから、俺たちは一緒に行動していない。
一応波止場の両親を心配させないよう朝は起こしに行くものの、家を出ると波止場は先に学校へ行ってしまう。
昼は昼でどこかに消えていくし、放課後は先に帰ってしまうしで、一緒にいるタイミングを悉く失っていた。
自分の隣に彼がいないのは寂しく、苦しく、自分の身体のパーツが一つ足りないような耐え難い喪失を感じる。波止場がいないだけで俺は上手く生きられない。
「でも、あんたたちがバラバラに行動してるせいでみんな心配してるけどね。あんたたちって入学してからずっとワンセットだったし」
宮子がちらりと教室を見た。確かにクラスメイトたちから慮るような視線を感じる。
「今のうちに王子様とお近づきになろ〜〜って狙ってるやつもちらほらいるみたいだけど」
「それはそれで困る……。俺、波止場一筋だから申し訳ないし……」
「モテる奴の発言だね」
「そりゃ、美少年だからな」
話しながらも気は落ちていく。勢いのままもう一度机に突っ伏しそうになり、宮子に頬を掴まれた。
「伏せるな。顔が見えないから」
「ぐっ、この面食いめ……」
そう言ってみれば、宮子は悪役のように唇を釣り上げて笑う。
「あたしが死ぬほど面食いだから、あんたの面倒な惚気と愚痴に付き合ってあげてるんだけど?」
「いつもありがとう、宮子様」
手が離れて自由になる。もう机に突っ伏さないように気をつけながら、掴まれた頬を軽くさすった。
「で、なんだっけ? 波止場に『もう一緒にはいられない』って言われたんだっけ?」
「違う。しばらくは一緒にいられない、だ」
「はいはい。それで、そう言われる心当たりは?」
問いかけられると、上着のことが思い出される。傷口を抉るような覚悟を持って口を開いた。
「波止場のジャージ、勝手に着た……上着だけだけど」
「それじゃないね。次」
宮子の言葉が俺の覚悟を叩き落とす。ショックだった。
しかし次と促されてもあまり思いつかない。少し考えてから、できるだけ小さな声でその名前を囁いた。
「……あのさ、三国って女の子知ってる? 多分、同じ学年の」
「三国って、三国 円(みくに まどか)? ツインテールですっごくかわいい子」
「そうそう、その子」
波止場の様子がおかしくなったのは、彼女との話を終えて戻ってきてからだ。上着の件が関係ないなら、彼女が関係しているのかもしれない。
けど、彼女が俺を拒絶する原因だとは思えなかった。見知らぬ女子生徒に「あいつのせいだ」と思いたくないのもあるし、波止場が俺から離れるなんて大きな選択をする時、関係の薄そうな女子生徒が関わっていたとは思えない。
「もちろん知ってる。何せ、マジで本当超かわいいからね。あたしの美少女フォルダに入ってるよ。一組の子で、かわいくてお淑やかで、お姫様でって有名だけど?」
「確かにかわいかった」
桃色の唇や守ってあげたくなるような小さい身体。確かに宮子のいう通りかわいくて、お淑やかで、お姫様だ。
「うちの学年の王子様があんたなら、お姫様はあの子。どっちも恋人いないのに告っても振るばっかりで、大変らしいけどね?」
「ま、俺は波止場一筋だから」
しかし、十二年間恋し続けた相手に今は拒絶されている。気持ちがずぶずぶ沈んできた。
「……とにかく、拒否されてる理由もわかんないんでしょ? 大体あんたは波止場にちょっと距離置かれたくらいで落ち込みすぎ。逆にあれでしょ、二人の関係を盛り上げるスパイス的なあれになるでしょ」
宮子は慰めるように声色を和らげた。俺もそれに応えるよう笑おうとしたが、上手く笑えない。
宮子が深く、深く、全身の空気全部を吐き出すみたいにため息をついた。
「……わかったわかった。あのさ、今度修学旅行あるじゃん?」
「え? あ、あぁ……そうだな」
彼女の言う通り、あと二週間ほどで二泊三日の修学旅行がある。行先は京都だ。
しかし急にそんなことを言われても話の繋がりが見えない。首を傾げると、もう一度ため息をつかれた。
「一日目って、班ごとに観光でしょ? あんた、波止場と同じ班になれば?」
「……なるほど! それなら一緒にいられるな!」
思ってもなかったその提案に光明が差した気がした。修学旅行の非日常的な雰囲気に紛れれば、勢いでドーンと解決できるかもれない。
しかし、すぐにその提案の欠点に気付いて膝から崩れ落ちた。
「班って修学旅行前に決定するんだから、結局今のうちに誘わないと駄目じゃねぇか……」
班決めはまだなので詳しいルールは不明だが、先輩たちは「修学旅行の班は仲のいい奴六人で組んで、修学旅行前に名簿を提出する」と言っていたはずだ。
つまり、結局波止場に声をかけなくてはいけない。頭を抱えると宮子がネイルの施された爪で机を叩いた。
「じゃあ今すぐ誘えば?」
提案が段々投げやりになってきた。
「なんで一緒にいられないか、わかんないのに!? それができるなら最初からそうしてるに決まってるだろ!」
「理由きいても答えてくれないなら、考えるだけ無駄だって。ほら、対面で言えないならチャットで言えばいいじゃん」
「そういう問題じゃ……」
尻込みする俺を前に宮子がばっさりと言い放つ。
「じゃあこのまま関係が自然消滅してもいいんだ? へー、波止場がほかの女と付き合ってもいいわけ? 波止場がどっかいってもいいわけ?」
「……よ、良くない……」
このまま関係が切れるのは、いちばん恐ろしい。
でも宮子のいう通りにすべきか、波止場の出方を待つべきか判断できない。波止場との関係が狂ったことなんて、一度もなかったのだから。
言いようのない不安に駆られていると、宮子が額をつついてきた。
「大丈夫だって。波止場があんたのこと嫌いなわけないじゃん。むしろあんたのことしか考えてないと思うよ。傍から見てるだけでもそう思うもん」
「そ、そうか……?」
「いつも一緒だとわかんないのかもね。ほら、あたしを信じて、早くチャット送って!」
バシバシ机を叩かれ、言われるがままチャットを立ち上げる。
「ほら早く入れて。修学旅行で同じ班になろうぜって。ついでに自由行動も一緒にいようよって」
「ちょっと待て、心の準備させろ」
「ビビるな。さっさとやれ」
髪を軽く引っ張られた。仕方なく『修学旅行、あるだろ? 班は同じでもいいか?』と打ち込む。
その瞬間、宮子が送信ボタンを押してしまった。
「ぎゃあ!!」
チャット画面に俺が打ち込んだ文字列が表示される。でかい悲鳴が出そうになるのを慌てて飲み込んだが、膝はありえないほど震えていた。
「送れた? 送れてるね。これ、消さないでね」
「う、あ、あぁ……」
震える俺を宮子が見つめる。その瞳の奥に優しい感情が見えた瞬間、変な声は引っ込んだ。
これでよかったのかはわからない。でも、彼女は俺を心配してくれている。そう思うとこれ以上、彼女の感情や好意を無下にできない。
それに彼女の言う通り、うだうだ悩んでいても仕方ない。そもそも喧嘩とか不仲とかなら、ほとんど喧嘩したことない俺より宮子の方が詳しいだろう。彼女に従うのが一番だ。
「……ありがとう、宮子。お前のおかげだ」
お礼をいえば宮子が僅かに口元を緩めた。柔らかくて、かわいらしい微笑みだった。
「でしょ。じゃあお礼、待ってるから。あたしの欲しいもの、当然わかってるよね?」
「わかってる。俺の自撮りだろ」
「そ」
当たり前のように彼女が頷いたので、俺はインカメを起動しながらスマホを取り出す。
「じゃあ、今撮っていいか?」
「今は元気の無い顔してるから、回復してから一番盛れる画角で撮って。あと衣装は制服以外で。なんならいろんな衣装で撮って」
「……わかったわかった。じゃあ、今度送るな」
ちょっと面倒な気もしたが、今の彼女には逆らえない。なんなら新品の服を買ってから撮ろうかと考えつつ、自撮りの約束をした。
「やった。楽しみにしてる」
無邪気に喜ぶ宮子の横で、こっそり波止場の方を見る。
波止場もこっちを見ており、目が合った瞬間慌てて視線を逸らした。
「(やっぱり、宮子の言う通り完全に嫌われたとは思えないよな……)」
だからこそ、何故彼が「一緒にいられない」と言うのかわからない。
ずっと一緒にいた。これからも一緒だと信じていた。それならなぜ、一緒にいられないのだろう。やっぱり上着を着たせいか?
それとも、あの三国という女子生徒と何かあったのだろうか。
果てのない疑問を抱きながら、俺は宮子の話に相槌を打った。

