その時、遠くから柊弥くんを呼ぶ声が聞こえてきた。制服を着崩した男子が3人、柊弥くんに向かって手招きしている。
「何してんだよー!早く来いって!女子達呼んでるー」
「あー!今行く!待ってて」
【女子達が呼んでる…】
友達が多いんだなとは思っていたけど、柊弥くんは女の子にも人気なんだ。それもそうか。顔もキリッとした男前で、こんなに優しくて明るかったらきっとモテるに違いない。
「すんません、先輩…。えっと…俺が言いたかったこと伝わりました?」
「ああ、伝わった。ありがとう」
「本当はもっとあるんですよ」
「じゃあ、それはまた今度聞くよ。今は友達待ってるみたいだから、早く行ってあげな」
「…はい」
さっきの彼の言葉。どうして、優しいのも構うのも俺にだけなんだろう。真意は分からないけど、柊弥くんのあの真剣な目を見たら、その言葉自体に嘘は無いように思う。
彼が人のことをよく見ているとは俺も思ったけど、誠実な部分も多そうだ。
「じゃあ、先輩また…」
「あ…、たけ…柊弥くん」
「!は、はい!」
「ま…、ま…、またね」
「…っ!!!」
緊張したけど、思い切って絞り出してみた
【またね】
今まで自分から、柊弥くんにこういう友達っぽい言葉は言ったことがない。今なんとなく言いたくなってしまったけど、変じゃなかっただろうか?誰かに、またねなんて言ったの中学以来かもしれない。
耳が熱い。もしかしたら赤くなっているかも。
「かっ、かっ……」
「か?」
「~~~っ可愛いーーー!!!」
「えっあっ、ちょ、柊弥くん!?」
すごい勢いで走って行ってしまった…。
か、可愛いって叫んでいたような…。可愛い?さっきも言っていたけど、俺のどこが可愛いんだろう…。分からないけど、彼の全力で走る後ろ姿を見届けていたら何だか可笑しくなったきた。
「……ふふっ、なんだそれ」
不思議だ。今日は顔の筋肉を張っていた糸が切れてしまったかのように、一人ででも自然と笑みが零れ落ちる。
こんな風に笑ったの、いつぶりだろう。


