笑ってみて、緋咲先輩



 「あ!いた!緋咲先輩!」

 今日のお昼はいつもと場所を変えて、3階のテラスで食べていた。なのに、さも当たり前かのように竹舘くんは俺の目の前に現れた。よく通る大きな声でいつも俺のことを呼んでくれるから、周りの生徒達もチラチラとこちらの様子を伺っている。

 「竹舘くん、よくここが分かったな」
 「あーー!1日も経たないうちに呼び方リセットされてますって!柊弥ですよ!」
 「あ、そうだった…。柊弥くん」
 「はい!」
 「なんで俺がここにいるって分かったんだ?」
 「屋上見に行ってみたら居なかったので、先輩の特性を考えたら中庭かここかなー?って!」

 特性…虫みたいなやつ?

 「すごいな、竹舘くんは人の特性まで分かるんだ」
 「しゅ、う、や!」
 「あ…、しゅ、柊弥くん…」
 「俺はこう見えて人を観察するの好きなんですよ。その中でも、特に先輩のことを観察するのが好きですけどね」

 ニカッと歯を見せて笑う。眩しいくらいの柊弥くんの笑顔。俺の変な笑顔とは違う、可愛らしくて太陽みたいだ。

 柊弥くんみたいに笑えたらな…。

 「…柊弥くんはキラキラしてる、太陽みたいだ」
 「なっなんですか!急に…」
 「俺もそんなふうに笑えたら…捨てられなかったのか」
 「…え、」

 しまった。つい本音が零れてしまった。誰にも話してなかったこと…。彼の人懐っこさに、つい気が緩んでしまったようだ。

 柊弥くんは、聞き逃さなかったぞと言わんばかりにこちらを凝視している。そして少し空けて隣に座っていた間隔を、ぐいぐい縮めてきた。

 「捨てられなかったのか…って?なんですかそれ!先輩、今の話教えてください」
 「あ、いや、えっと…俺個人の話だから…、暗い話で面白くはないし…」
 「面白くなくても、先輩の話なら何でも聞きたいです!」