笑ってみて、緋咲先輩



 「緋咲先輩ってクールでかっこいいよね」

 そんな風に言われるようになったのは、去年の半ばぐらいからだ。元々お喋りではないし目立つタイプではなかったけど、高2頃からやけに「クール」と言われることが増えた。

 俺は別にクールになりたくてしている訳ではない。極力笑わないようにしていたら、いつの間にかそうなっていただけだ。学校の人達は事情を知らないから、俺を「元からクールで近寄り難い人」と印象づけてしまったのだろう。

 そのせいか、同学年からも後輩からも男女共に一目置かれるようになってしまった。一人でいるのは好きだから別に問題はないが、よそよそしくされると気になってしまう。特定の仲良しな人もいないし、クラスメイトは必要なことがあれば話す程度。

 「あ、緋咲先輩だっ」

 俺が学校内で日常的によく喋るのは、唯一この人だけかもしれない。いや、喋るというか絡まれてるというか、なんというか…。

 「今日は朝から会えてラッキー♪一緒に行きましょ!」

 竹達柊弥(たけだちしゅうや)くん。俺の一つ下で2年生。なぜか毎日俺に会いに来るし、飼い犬のように懐いてくれている。