笑ってみて、緋咲先輩


 「す、好きって…そ、その…」

 柊弥くんが俺を…本当に…?

 「そういう意味で…、付き合いたいって意味です」
 「…っ!」

 胸が激しく高鳴る。足元から火が登ってきたみたいに顔が熱い。今まで、人伝いに俺のことをあの女子が好きらしいとかはたまに聞いたことがあるけど、こんな真正面からストレートに告白されたのは初めてだ。

 元彼の時も何回かデートして「付き合っちゃう?」と聞かれてOKしたから、告白らしい告白ではなかったし…。

 しかも、あの柊弥くんが…?
 飼い犬みたいに懐いてくれていると思ってた後輩が…。
 いつも明るくて賑やかで、人の真ん中にいるような柊弥くんが…。

 俺のことを好きだなんて。

 「あ…え、えっと、俺は…」
 テンテロテンテンテンッテンテンテンテンテロテンテンテンッ

 「「!!!」」

 俺が口を開いた瞬間、タイミングが良いのか悪いのか。ポケットに入れていたスマホが突然激しく鳴り始めた。しかもメッセージ系ではなく、着信を知らせる長尺の音楽だ。

 「あっ!ご、ごめん!消音にするのを忘れてた…!」
 「あああいえいえ!!」


 慌ててスマホを取りだして画面を見てみる。

 「…え、」

 そこには、懐かしい名前が映し出されていた。

 《(かおる)くん》

 去年別れた元彼の名前。
 高一の時初めて付き合った大学生の彼氏…。

 目にすると辛くなるから別れてすぐLI〇Eはブロックしたが、電話帳までは気にしてなかった。電話番号の方でかけてきたんだ。今更何の用で…。

 「先輩…?どうかしました?電話大丈夫ですか?」
 「え、ああ…大丈夫だ」

 声をかけられ我に返り、液晶の赤い通話を切るボタンを押した。けたたましく鳴っていた着信音が止み、俺達の間に静寂が訪れる。

 「柊弥くん…。あの、返事、少しだけ待ってくれないか?」
 「!!え、あ、はっはい…!待ちます!考えてくれるだけで…嬉しいっす」
 「…悪い、ありがとう」

 切なそうに目を伏せて、でもどこか照れくさそうに呟いた柊弥くん。

 こんな素直で誠実で、ありのままの俺を好きだと言ってくれてる…この人となら大丈夫なんじゃないかって気がする。

 告白だって、すごく怖くて不安で勇気がいっただろう。それでも必死に伝えてくれた。

 でも俺は…?このまま…でいいのか?