「高城……っ……?」
押し潰されそうなほど強い力で抱きしめられ、俺は驚きで涙を引っ込めた。
首元に埋められた高城の頭から、彼の荒い息遣いと、身体の微かな震えがダイレクトに伝わってくる。
「高城、苦し——」
「黙って聞け」
高城がゆっくりと顔を上げた。
暗がりの中で見つめ返してくる彼の瞳は、熱く、激しく揺れていた。これまで一度も見たことがないほど剥き出しの感情が、そこにはあった。
「俺がいつ、お前に完璧になれなんて言った?」
「え……」
「俺が好きになったのは、陽キャのフリして必死に浮こうとしてる完璧な奴なんかじゃない。人見知りで、不器用で、すぐテンパって……それでも一生懸命に頑張ってる、そのままのお前だ」
高城の大きな手が俺の頬を包み込む。
親指が、頬に残った涙の痕を優しく撫で上げた。
「お前が他の奴らに合わせて無理な笑顔を作ってるのを見るたび、俺がどんだけイライラしてたか分かってんのか。そんな下らん仮面なんか脱いで、俺の前だけで泣いたり笑ったりしてればいいんだよ」
「た……高城……それって……」
「分かんないか? 俺はお前が愛おしくてたまらないんだよ、葵」
ドクン、と胸の奥で大きな音が弾けた。
『愛おしい』。高城の口から出たその言葉が、熱を帯びて俺の全身を駆け巡る。
「俺の隣にふさわしい奴になりたい? 順番が逆なんだよ。俺がお前を誰にも渡したくなくて、俺の隣に縛り付けておきたいだけだ。……お前が俺以外の奴に笑いかけるのも、他人のために無理して倒れるのも、もう耐えられない」
高城の顔が近づいてくる。
逃げる間もなく、温かく柔らかなものが俺の唇に重なった。
「ん……っ!?」
息が止まる。
深くて、切なくて、熱いキス。
ただの接触ではなく、こちらの唇を貪るように、何度も角度を変えて重ねられる重厚なキスだった。
頭の中が真っ白になり、熱で火照った身体からスーッと力が抜けていく。
「ふ……んあ……高城……っ」
唇が離れると、銀の糸が小さく引いた。
高城は息を荒くしながら、俺の額に自分の額をこつんと押し当ててきた。
「俺の気持ち、これでも疑うか?」
「う、ううん……っ……」
俺は首を激しく振った。
疑う余地なんて、どこにもなかった。高城の瞳に映っているのは、間違いなく俺一人だけで。彼がどれほど深く自分を思ってくれていたのかが、痛いくらいに伝わってきていた。
じわじわと、胸の奥から幸せな温もりが溢れ出してくる。
「俺も……っ」
俺は高城のTシャツの胸元を、ぎゅっと両手で握りしめた。
「俺も……高城が好き。ずっと……助けてくれて、優しくしてくれて……格好よくて……大好き……っ」
消え入りそうな声で打ち明けると、高城の瞳が大きく見開かれた。
次の瞬間、彼はフッと耐えきれなくなったように笑い、俺を再び強く抱きしめた。
「……やっと言った。長かった……」
「え……?」
「サークルの新歓で、お前が一人で無理して引きつった笑顔浮かべてた時から、ずっと狙ってたんだよ」
「ええぇぇ!? そんな前から!?」
「だから言ったろ。お前のことは全部見てるって」
高城の低い笑い声が胸に心地よく響く。
高城は俺をベッドに優しく横たわらせると、布団を肩までかけ直し、自分の身体もその中へと滑り込ませてきた。
「た、高城!? 一緒に入るの!?」
「患者の保温だ。大人しくしてろ」
「絶対違うでしょ……っ!」
文句を言おうとしたけれど、高城の大きな腕が腰に回され、ぐっと胸元に引き寄せられると、もう何も言えなくなってしまった。
高城の体温と、甘い柑橘の香り。それが何よりも心地よい睡眠薬だった。
「葵。明日、イベントは俺がサークルの奴らに連絡して代わりの要員立てておくから、お前はここで一日中休め」
「でも……」
「『でも』じゃない。これからは、俺に全部甘えろ。分かったな?」
「……うん。わかった」
高城の胸に顔を埋めると、高城は満足そうに俺の頭を何度も撫でてくれた。
熱で重かった瞼が、ゆっくりと閉じていく。
「おやすみ、葵。……愛してる」
「おやすみ……高城……」
世界で一番優しくて、過保護な腕の中で。
俺は生まれて初めて、何の仮面もつけずに、幸せな眠りへと落ちていった。
押し潰されそうなほど強い力で抱きしめられ、俺は驚きで涙を引っ込めた。
首元に埋められた高城の頭から、彼の荒い息遣いと、身体の微かな震えがダイレクトに伝わってくる。
「高城、苦し——」
「黙って聞け」
高城がゆっくりと顔を上げた。
暗がりの中で見つめ返してくる彼の瞳は、熱く、激しく揺れていた。これまで一度も見たことがないほど剥き出しの感情が、そこにはあった。
「俺がいつ、お前に完璧になれなんて言った?」
「え……」
「俺が好きになったのは、陽キャのフリして必死に浮こうとしてる完璧な奴なんかじゃない。人見知りで、不器用で、すぐテンパって……それでも一生懸命に頑張ってる、そのままのお前だ」
高城の大きな手が俺の頬を包み込む。
親指が、頬に残った涙の痕を優しく撫で上げた。
「お前が他の奴らに合わせて無理な笑顔を作ってるのを見るたび、俺がどんだけイライラしてたか分かってんのか。そんな下らん仮面なんか脱いで、俺の前だけで泣いたり笑ったりしてればいいんだよ」
「た……高城……それって……」
「分かんないか? 俺はお前が愛おしくてたまらないんだよ、葵」
ドクン、と胸の奥で大きな音が弾けた。
『愛おしい』。高城の口から出たその言葉が、熱を帯びて俺の全身を駆け巡る。
「俺の隣にふさわしい奴になりたい? 順番が逆なんだよ。俺がお前を誰にも渡したくなくて、俺の隣に縛り付けておきたいだけだ。……お前が俺以外の奴に笑いかけるのも、他人のために無理して倒れるのも、もう耐えられない」
高城の顔が近づいてくる。
逃げる間もなく、温かく柔らかなものが俺の唇に重なった。
「ん……っ!?」
息が止まる。
深くて、切なくて、熱いキス。
ただの接触ではなく、こちらの唇を貪るように、何度も角度を変えて重ねられる重厚なキスだった。
頭の中が真っ白になり、熱で火照った身体からスーッと力が抜けていく。
「ふ……んあ……高城……っ」
唇が離れると、銀の糸が小さく引いた。
高城は息を荒くしながら、俺の額に自分の額をこつんと押し当ててきた。
「俺の気持ち、これでも疑うか?」
「う、ううん……っ……」
俺は首を激しく振った。
疑う余地なんて、どこにもなかった。高城の瞳に映っているのは、間違いなく俺一人だけで。彼がどれほど深く自分を思ってくれていたのかが、痛いくらいに伝わってきていた。
じわじわと、胸の奥から幸せな温もりが溢れ出してくる。
「俺も……っ」
俺は高城のTシャツの胸元を、ぎゅっと両手で握りしめた。
「俺も……高城が好き。ずっと……助けてくれて、優しくしてくれて……格好よくて……大好き……っ」
消え入りそうな声で打ち明けると、高城の瞳が大きく見開かれた。
次の瞬間、彼はフッと耐えきれなくなったように笑い、俺を再び強く抱きしめた。
「……やっと言った。長かった……」
「え……?」
「サークルの新歓で、お前が一人で無理して引きつった笑顔浮かべてた時から、ずっと狙ってたんだよ」
「ええぇぇ!? そんな前から!?」
「だから言ったろ。お前のことは全部見てるって」
高城の低い笑い声が胸に心地よく響く。
高城は俺をベッドに優しく横たわらせると、布団を肩までかけ直し、自分の身体もその中へと滑り込ませてきた。
「た、高城!? 一緒に入るの!?」
「患者の保温だ。大人しくしてろ」
「絶対違うでしょ……っ!」
文句を言おうとしたけれど、高城の大きな腕が腰に回され、ぐっと胸元に引き寄せられると、もう何も言えなくなってしまった。
高城の体温と、甘い柑橘の香り。それが何よりも心地よい睡眠薬だった。
「葵。明日、イベントは俺がサークルの奴らに連絡して代わりの要員立てておくから、お前はここで一日中休め」
「でも……」
「『でも』じゃない。これからは、俺に全部甘えろ。分かったな?」
「……うん。わかった」
高城の胸に顔を埋めると、高城は満足そうに俺の頭を何度も撫でてくれた。
熱で重かった瞼が、ゆっくりと閉じていく。
「おやすみ、葵。……愛してる」
「おやすみ……高城……」
世界で一番優しくて、過保護な腕の中で。
俺は生まれて初めて、何の仮面もつけずに、幸せな眠りへと落ちていった。


