擬態陽キャは隠しきれない〜人見知りな俺、過保護なハイスペ男子に甘やかされています〜

初夏の爽やかな風が、大学のキャンパスを吹き抜けていく。

大型新歓イベントから一ヶ月が経った。
あの日、高城の家で介抱されて熱が下がった俺は、高城から「今日から俺達は付き合ってるから」と当然のように宣言され、晴れて恋人同士となった。

そして、俺のキャンパスライフは180度変化した。

「あ、瀬名く〜ん! 今日の講義のノート、高城くんに見せてもらった?」
「瀬名ー、今度のサークル飲み、お前はお酒飲まないでジュースで参加しなよ〜!」

「あはは、うん! ありがとう!」

俺は自然な笑顔で答える。
もう無理に明るく振る舞うことも、大声をあげて場を盛り上げることもしていない。
人見知りで、大人しくて、ちょっと不器用。そんな「ありのままの自分」でサークルの輪の中にいられるようになったのだ。

なぜなら——

「葵。喉乾いてないか? お茶買ってきたぞ」

後ろから歩いてきた高城が、冷たいペットボトルを俺の頬にポンと当ててきたからだ。

「わっ、冷たい! 高城、ありがとう!」

「日差し強いから帽子かぶれ。あと、さっきあっちの男子と話す時、距離近くなかったか」

「えっ、普通の距離だったよ!? 高城、過保護すぎるって〜!」

「過保護で結構。お前は油断するとすぐ他の奴に愛想振りまくんだから」

高城はプイッと横を向くと、ごく自然に俺の手をギュッと握りしめてきた。
キャンパスの真っ只中だというのに、恋人繋ぎで指を絡めてくる。

「あ、高城……周りの人が見てるって……!」

「見せつければいいだろ。『瀬名は俺のものだ』って」

「〜〜〜っ! もうっ!」

顔を真っ赤にして抗議する俺を見て、通りがかったサークルの先輩たちが「高城、相変わらず瀬名のこと溺愛してんな〜!」「瀬名くん、今日も愛されてるね〜!」と口々に冷やかして笑う。

以前なら「浮いてしまった」「イケてない」と絶望していただろう。
だけど今の俺は、高城の繋いだ手の温もりを感じながら、心から笑うことができていた。

(無理して『陽キャ』になんてならなくてよかった)

カッコ悪い自分も、不器用な自分も、全部抱きしめて愛してくれる人がここにいる。

「高城」

「ん?」

「大好きだよ」

背伸びをして耳元で小さく呟くと、高城は一瞬驚いたように目を見開き、次の瞬間、見たこともないほど甘く優しい笑顔を浮かべた。

「……帰ったら、覚えてろよ」

ギュッと握り返された手の熱さは、きっとこれから先も、ずっと俺を温め続けてくれるのだと思う。

青空の下、俺たちは並んで歩き出した。
甘くて、過保護で、最高に幸せなキャンパスライフの真っ只中を。