翌朝。窓から差し込む陽光で目を覚ました紗和は、ベッドの脇に立つ奇妙な影に息を呑んだ。
「おはようございます、奥様」
声の主は、ひび割れた陶器の肌を持つ西洋人形だった。
美しい金糸の髪に、書生が着るような絣の着物と袴、そして編み上げブーツを合わせている。
瞬きをするたびに、ガラス玉の瞳がカチリと鳴った。
「私はこの館の雑務を取り仕切る『ルイ』と申します。さあ、お召し替えを!」
さらに、ルイの足元からは「ぴゅぅ」と愛らしい声を上げて、巨大な毛玉のようなあやかしが顔を出した。
白銀の毛並みを持つ、狼と犬を掛け合わせたような丸っこい獣だ。
よく見れば額に小さな角が生えているが、潤んだ瞳はひどく人懐っこい。
「こちらはマリオですよ! 毬のように弾むのです! 噛みつきませんのでご安心を」
ルイの言葉に、マリオが得意げに胸を反らす。
可愛らしい仕草に、緊張しきっていた紗和の心が少し軽くなる。
西洋人形型のルイと、もふもふの獣。
彼らは昨日、大広間で紗和を威圧した恐ろしい異形たちとは打って変わり、驚くほど甲斐甲斐しく紗和の世話を焼いた。
温かい湯で体を拭き、見事な刺繍が施された着物を着せ、紗和がこれまでの人生で見たこともないような、豪勢な食事を運んでくる。
獣のあやかし――マリオに至っては、紗和の足元にすり寄り、撫でてくれとばかりに太い尻尾をぱたぱたと振っていた。
(……ここが恐ろしい化け物の巣窟だなんて、信じられないわ)
没落して以来、誰かからこんなに優しくされたことなどなかった。
紗和は獣の柔らかな毛並みに指を埋めて撫でながら、少しだけ毒気を抜かれたように息を吐く。
ルイもまた、そんな紗和の艶やかな黒髪を、ガラスの櫛で嬉しそうに梳かしていた。
「おはようございます、奥様」
声の主は、ひび割れた陶器の肌を持つ西洋人形だった。
美しい金糸の髪に、書生が着るような絣の着物と袴、そして編み上げブーツを合わせている。
瞬きをするたびに、ガラス玉の瞳がカチリと鳴った。
「私はこの館の雑務を取り仕切る『ルイ』と申します。さあ、お召し替えを!」
さらに、ルイの足元からは「ぴゅぅ」と愛らしい声を上げて、巨大な毛玉のようなあやかしが顔を出した。
白銀の毛並みを持つ、狼と犬を掛け合わせたような丸っこい獣だ。
よく見れば額に小さな角が生えているが、潤んだ瞳はひどく人懐っこい。
「こちらはマリオですよ! 毬のように弾むのです! 噛みつきませんのでご安心を」
ルイの言葉に、マリオが得意げに胸を反らす。
可愛らしい仕草に、緊張しきっていた紗和の心が少し軽くなる。
西洋人形型のルイと、もふもふの獣。
彼らは昨日、大広間で紗和を威圧した恐ろしい異形たちとは打って変わり、驚くほど甲斐甲斐しく紗和の世話を焼いた。
温かい湯で体を拭き、見事な刺繍が施された着物を着せ、紗和がこれまでの人生で見たこともないような、豪勢な食事を運んでくる。
獣のあやかし――マリオに至っては、紗和の足元にすり寄り、撫でてくれとばかりに太い尻尾をぱたぱたと振っていた。
(……ここが恐ろしい化け物の巣窟だなんて、信じられないわ)
没落して以来、誰かからこんなに優しくされたことなどなかった。
紗和は獣の柔らかな毛並みに指を埋めて撫でながら、少しだけ毒気を抜かれたように息を吐く。
ルイもまた、そんな紗和の艶やかな黒髪を、ガラスの櫛で嬉しそうに梳かしていた。



