クラスメートボクメツゲーム

 突然誰かのお腹が鳴った。
「あ」
冬馬だった。
「お腹すいたの?私、まだお腹すいてないよ」
萌香が笑う。時計を見ると、もう、1時になっていた。
スマホで救急隊を呼ぼうとしたが、冬馬たちのスマホは、ヒミツに没収されており、使えない。
「あっはは~♡みんな、お腹すいちゃった?じゃあ、休憩時間にするよ‼みんな、体育館においで~」
ヒミツはメイド服姿で現れると、廊下に冬馬たちを並ばせ、体育館に連れて行った。
体育館には、和食から洋食、中華など、いろいろなものがテーブルに並んでいる。デザートまである。
「うまそう…」
冬馬は誰にも聞かれないと思って言ってしまったが、萌香は聞いていた。
「たしかにうまそうだよね」
「えっ⁉聞いてたの⁉」
冬馬の頬が赤くなる。それを見た萌香はいたずらっ子のように笑った。
「私は何でも聞いてるんだよ~」
「あ、そういえば、朝見たあの手紙、不気味だね~」
冬馬が話を変える。萌香は相変わらずニヤニヤしている。
「あ、あんまり、笑うなよ…。だって、俺、お腹すいてたんだから!」
冬馬が恥ずかしそうに言った。だが萌香は、笑うのをやめない。
「よ~し!バイキングの準備ができたよ~♡好きなだけ食べてね~♡『食べ過ぎないように』ね~」
ヒミツが言って、クラスメートたちが次々とご飯をよそっていく。
冬馬もからあげやチャーハンを取ろうとしたが、ヒミツの言葉の中で、何かが気になった。
萌香も、唯人も、他のみんなも、食事を堪能している。
「意外とおいしいよ!」
萌香が無邪気に言う。本当は萌香もお腹がすいていた様だ。
ヒミツが最後に言った言葉。『食べ過ぎないように』。本当にそうなのか。意味のままなのか。
もしかしたら…第三ゲームは体力系なのかもしれない。だからヒミツは警告として?
いや、ヒミツは優しくなんかない。忠告なんかしない。冬馬たちを苦しめるのが好きなのだから。
周りを見ると、冬馬と翔也だけが食べていない。何かが引っかかる。
もしかして…
「みんな‼食べるのをやめろ!それは、危険だ!」
だが、間に合うはずもなく、それを食べた萌香たちは…
まず、一番最初に光希が倒れた。それに続いて、唯人、博義、奈子、萌香、咲楽…
最後に、冬馬と翔也を除く、クラスメートの全員が倒れた。
「そんな…‼ヒミツ、この食べ物の中には、毒が入っているのか!!」
「全員の食べ物の中ではないよ~!ここの料理を食べた人のうち、一人だけ、死ぬようになってるから♡お皿のところに、毒が塗られてるんだ!無色透明で匂いも無いから危険なんだよ~!うふふ♡あとのみんなはただの睡眠薬だから安心して~」
「安心できない‼毒を盛られているのは誰なんだ…っ!すぐに助けないと…」
冬馬はあたりを見渡す。不気味に笑っている翔也の姿が見える。翔也に本気で怒りたい気分だったが、冬馬は必死に落ち着こうとした。そして、これならいけるかもしれない、と思って、ヒミツのいる場所へと近づく。
「ヒミツ。君は…本当に、人の不幸を望んでいるのか?もしかして、本当は、こんなことやめたいと思っているんじゃないのか」
冬馬の言葉に、一瞬だけヒミツは反応した。平気を装っているが、何か思い当たることがあるのか。
「もう、やめよう。俺たちだけじゃなくて、ヒミツも限界なはずだ。サイコパスを演じるのはやめよう」
「冬馬くんったら~♡私は、君たちが苦しんでいるところが見たいだけ…」
ヒミツの言うことを遮って、冬馬は言う。
「何か、辛いことがあったのか?だったら、俺に言ってほしい。ヒミツの本当の姿、本性を見たい。今のヒミツは、本当のヒミツじゃない。俺はそう思っている」
「本当の私…?そんなの、とっくに消えたよ‼このゲームの案内人をするだけで、1000万円がもらえるって言われたの~♡めっちゃお得じゃない?だから、やってみたの~!そしたら、いろんな人の死を見てきて、おかしくなっちゃったんだ~♡」
ヒミツは笑いながら言うが、どこか悲しそうに見える。冬馬は、本来の目的を忘れて、ヒミツを助けたい、と思ってしまった。
本来の目的。それは、ヒミツが心変わりをしたら、毒を盛られた誰かを助けられるかもしれない、という目的だった。
ただ、誰かを助けたい。最初はそう思っていた冬馬だったが、ヒミツを変えれば、ゲームを終わらせられるかもしれない、という希望を持った。
「ヒミツ。命は、金よりも大事だよ。金をもらっても、命は買えない。毒を盛られた人は誰?教えてほしい」
「名言をありがとう~冬馬くん♡でもね、グチグチうるさいんだけど~!私は、もう、元の私じゃないから…」
ヒミツは、メイド服のポケットらしきものから、ナイフを取り出した。冬馬が怯む。
「あ~あ。面白くないな~。結局、冬馬くんは守られてばかりで、誰にも裏切られない。つまんな」
翔也が口を挟む。
「ヒミツ。このゲームはもう、終わりにしよう。翔也も、つまらないと言っている。それと、毒を盛られた人を教えてくれ」
冬馬は翔也の方を見ずに、ヒミツをまっすぐ見つめて言った。
「う~ん。まぁ、ゲームを終わりにしても1000万円はもらえるからいっか~!仕事も少なくなるしね♡でも、翔也くんはどう思うの~?」
ヒミツは、ゲームを早く終わらせることに反対していないようだが、翔也が引き下がらない。
「僕は、終わらせたくないよ~!だって…僕の今までのお小遣いを全部使ったんだもん」
翔也の家は金持ちだ。『お小遣い』と言ったら、結構の量があるだろう。それの値段を聞いて政府が引き受けたのかもしれない。
代々伝わる大企業の社長、ということもあり、翔也は「おぼっちゃま」である。
大企業の社長の息子の願いを聞かないことは、未来の政治にも関わる、と考えたのかもしれない。
「分かったよ、ゲームは続ける。でも、その人を助ける方法を教えてほしい」
「ごめんね~冬馬くん♡私は、誰が毒を盛られたか分からないの~!あはは」
冬馬の希望はあっけなくヒミツに壊された。すると、その時。
「うぅぅ…」
誰かが苦しむ声が聞こえる。光希だった。
「光希!しっかりしろ…っ!」
冬馬が光希の背中をさするが、光希は嘔吐をやめない。冬馬は、カウンターから皿を持ってきて、光希の前に置く。
そして、光希が食べていたものを、また新しい皿に移し、毒が盛られている皿を、テーブル拭き用のぞうきんで拭いていく。
「お願いだ…!これで、光希が助かるように…」
だが、無念にも、光希は突然大きな声を出すと、泡を吐いて、倒れる。
「嘘だろ…っ!」
冬馬は必死に光希の背中を叩いて、光希の嘔吐を促す。少しでも、毒が出たら、光希の命は助かるかもしれない、という一心で冬馬は背中を叩き続ける。だが、最初は声を出して苦しんでいた光希だが、その声は、なくなった。
「残念~♡光希くんの死亡が確認されました~!そろそろ、他のみんなも起き上がるから、安心して~♡」
「クソ…っ」
翔也の笑い声が体育館に響いた。
「なぜ、わざわざ睡眠薬で眠らせたんだ」
「だって~♡今回の死亡シーンはちょっとグロいじゃん?だから、他のみんなは眠らせてあげたんだぁ~!偉いでしょっ?」
ヒミツはどや顔だが、冬馬は納得できずに腕を組む。
「あとぉ~!第三ゲームのため、でもあるかなぁ~?うふふ♡ヒント~♡」
第三ゲームのため?と、いうことは…第三ゲームの内容は…
冬馬が考えていると、クラスメートたちがどんどん起き上がる。最初に起きたのは黒瀬蓮だった。
最後に、佐伯ほのかが起きて、クラスメートのほぼ全員が起きる。光希だけが起きない。
「おい、冬馬。光希は…」
蓮が冬馬を睨んで言う。冬馬は答えないため、蓮は続ける。
「死んだのか?」
冬馬はうなずいた。蓮は冬馬のシャツの襟をつかむと、冬馬を睨みながら言う。
「冬馬、お前のせいだ」
「違う!冬馬のせいじゃないでしょ!蓮は関係ないじゃない」
萌香が蓮と冬馬を引き離す。
「ランダムで、毒が盛られていたらしい。実際、俺が悪い。もっと早く気づいていればよかったのに…」
「助けようとせずに偉そうなことを言うんじゃない」
「助けようとしたよ。でも、助けられなかったんだ。蓮の言うとおりだ。俺が悪い」
その頃、ヒミツはホワイトボードを持ってきて、何やら書き込んでいた。
「喧嘩中悪いけど~♡第三ゲームを始めるよっ!」
ホワイトボードには、汚い字で、『第三ゲーム』と書かれていた。
「第三ゲームは…『コロシヤゲーム』だよ~♡みんなはライフル銃を持って、自由に殺し合いをしてもらいます♡」
それを聞いて、涼花と奈子がひそひそ話している。
「ターゲットは決まってるよね?」
「うん」
その様子を見て、博義は、咲楽が狙われていることに気づいた。だが、奈子を撃つのは気が引ける。
涼花を撃とう。博義のターゲットが決まった。
「ルール説明をするよ~♡いいかな?」
皆がうなずく。
「嫌なゲーム」
萌香がつぶやいた。冬馬は萌香が言ったことに対し、大きくうなずく。
ヒミツがホワイトボードに何かを書き込んだ。