オカルトすぎる多々良くんを保護します

屋上のベンチに座っているのは、多々良を挟んで郡司、多々良を挟んで、セーラーおじさん。
多々良はお弁当、郡司、セーラーおじさんは焼きそばパンをほうばっている。郡司は焼きそばパンを食べているおじさんをじっとみていた。

「郡司、がっつり?」
「ああ、おじさんが焼きそばパンがっついてる、しかもセーラー服だ」
「完全に見えてるね」

セーラーおじさんは多々良の近くにもっと近づく。
「なんか、多々良と距離近くね?おじさん、多々良から離れろ」
おじさんはそれでも、多々良から離れない。
「実はおじさん、くっつき虫だからね、最近になって分かったんだけど」
「はあ?なんだそれ、それって多々良のこと」
「…好きだよ」

おじさんが、初めて言葉を発した。多々良も目を丸くして仰天している。
「え、今なんて」
「おじさん、何言ってんの」
「ずっと見てきたんだ、多々良萌を」
「…」
「小学5年生のクリスマス、あの時から、俺が守るって決めたんだ」
「ああ、懐かしいね…」
「クリスマスってやっぱりなんかあったのかよ、多々良、俺に教えてくれよ」
「そうだね、郡司に聞いてもらおっか、おじさん」
おじさんはこくりと頷き、話だした。

・・・
小学校5年生の多々良萌。前髪ぱっつんの陽気な子だった。
ホールケーキを持って、スキップして家に帰る多々良。玄関を開けると、何かが匂う、しーんと静寂だ。
「ただいまー、母ちゃん父ちゃん」
ゆっくりリビングに入ると、多々良は血で滑って転び、ホールケーキも飛び出した。両親は殺害されていて、血にまみれで倒れていた。 
「母ちゃん、父ちゃん!!!!!」
目の前にセーラーおじさんが立っていた。衝撃のあまり、多々良はそこから記憶がなくなった。

多々良は、記憶がまだ戻っていないのだろうか、郡司は複雑な顔をしていた。
「…そうか、そんなことが」
「うん、郡司ごめんね、こんな話」
「いや、俺が聞きだしたことだから、話してくれてありがとう」
「おじさんもありがとう。話してくれて、久しぶりに声が聞けて嬉しいよ」
「うん、萌の大切な友達だからね」
「萌?」
多々良とおじさんは、信頼しあっているように見えた。
「それで、おじさんはなんで出てきてくれたんだ」
「ああ、それは多々良に近付いている郡司くんに取られないようにだよ」
「はあ?どういうこと」 

多々良をぎゅっと抱きしめたおじさんは自慢のように、郡司に見せつけてくる。
「はあ?ああ?あああーー?」
郡司の顔は、鬼のように忙しかった。
「おいおじさん、多々良にベタベタ触るんじゃねーよ」
「あ、そうそう、郡司くんに言っておきたい事があるんだけど、僕たちはあの時からずっと一緒だから。萌のことは僕が一番知ってるから」
「ああ?何がいいたいんだよ!」
郡司はおじさんに顔を近付けて、メンチを切っている。
「萌はお前じゃ守れない」
「…はあ?上等だよ、かかってこいよ!!」

郡司はファイティンポーズをして、戦いの表明をした。
郡司とおじさんの間にいた多々良は気まずそうにしていた。
「おじさん、郡司!仲良くしてよ、せっかく話せたんだし仲良くなろうよ!
そうだ、放課後行きたい所あるんだ」
「ああ、いつも行ってるあそこだね」
「どこだ?」
「郡司、弓道やったことある?」
「弓道?」
「おじさん弓道、すっごく上手いんだよ」
「はあ?上等だよ!!真ん中ぶち抜いてやる!!」
おじさんと郡司はぷいっとそっぽをむき、焼きそばパンを食べながら、めらめら燃えていた。

***
松風弓道教室。多々良とおじさんと郡司は、松風弓道教室で三人で打席に立っている。
弓道の順番は右から多々良、おじさん、郡司だ。おじさんは郡司の方を挑発して弓を堂々と構えた。

おじさん「ああ、そうだ、多々良の何を知ってるだ?まず俺からね」
おじさんは多々良に向かってウインクして弓道を構える。

おじさん「小学校では飼育係で、するめちゃんというウーパールーパーを飼っていた、あ、幼少期の萌知らなかった?」
郡司「ああ、するめちゃんがなんだよ」
おじさんの弓は赤い○に的中していた。
郡司はおじさんを睨んでいて、おじさんは意気揚々と自慢している。

郡司「多々良は唐揚げを食べているとき、りす見たいに頬袋でパンパンになる」
おじさん「ああ、萌は頬につめるくせがあるからね」
きっとおじさんを睨む郡司も弓を構えた。郡司の弓は的に届かない。
郡司「ああ、もっとあるんだよ」

おじさんは弓道の弓を構えて、赤いまるに的中した。
おじさん「萌の初恋は四葉のクローバー」
郡司「はあ?まじで」
多々良「ちょっとおじさん、バラさないでよ」
郡司「かわいすぎんだよ…」
多々良「もう、いいから、郡司よりかは点とれるし」
郡司「いや、俺も負けねえーぞ」

多々良はぷくっと頬膨らませて、睨むが、逆効果だ。
可愛いが勝る。おじさんと郡司の対決は、多々良の可愛いで終了して、その後も弓を満足するまで射抜いた。

*** 
松風弓道教室帰り道、多々良、郡司、おじさんと歩いて駅へ向かう。
爽快と疲労で混じっていて、気持ちよかった。

おじさん「なんで郡司くんは萌のこと気になったの」
郡司「多々良はいつも笑っていて、ずっと見ていたくなって、話したらすっげえ可愛いし、今何してるかなとか、ほっぺ膨らませてご飯食べてる?とか、多々良のことばっか考えて、だから一緒にいれて、すごい幸せで、幸せなんだ、俺」 
多々良「幸せ?」
郡司「うん、多々良がここにいる」
多々良「なんで、自分が何言ってるかわかってる?」
郡司「うん、わかってる」

多々良が郡司の手をとって、真っ直ぐに郡司と向き合った。
多々良「ここにいる、郡司も」
郡司「え、多々良」
多々良「郡司もここにいるよ」

多々良は郡司に向きあって、郡司のこと真剣に見つめていた。おじさんも微笑んでいた。