オカルトすぎる多々良くんを保護します

多々良萌、黒髪短髪、新都大学1年生。大学の講義で授業を聞いていると、先生の隣におじさんが立っている。見えているのは俺だけだ。しかも、セーラー服を着ているおじさんだ。

小学校から見えているおじさんは俺の側にいつも存在している。おじさんは先生が書いた授業の内容を黒板消しで、消している、もちろん実際には消えていない。
最近のおじさんの流行りは、先生になりきって先生ごっこをしているみたいだ。おままごとみたいなものかな。

黒板に書いた内容が見えなかったので、おじさんにアイコンタクトして、俺の隣に呼ぶとおじさんは、いつも隣に来てくれる。

小学5年のクリスマス以降、授業中も、部活中も、どこにいてもおじさんが見えるようになった。最初は怖かったけど、おじさんは俺に何をするでもなく、ただ空気のように側にいてくれた。おじさんに小声で合図を送る。

「こっちに来て、俺の隣においで」

おじさんは俺の左隣に座った。だけど視線は右から感じた。大学でもっともイケてると言われている、茶髪で陽キャと言われている、郡司渉だ。

(もしかしてバレた?いや、そんなことない、声大きかったかも)
郡司は俺をじっと見て、ニヤリと笑っていた。
(なんだ、何でこっち見てくるの)

***
昼食も俺はぼっちで、授業が終わると教室で食べる事が多い。手作りのお弁当、毎日好きなものだけ入れる。俺は唐揚げが大好きで、卵焼き、ハムチーズ、丸めたおにぎり2個、お弁当ほとんどこのメニューだ。

唐揚げを両頬パンパンに包ばると、シャクっとして口周りが油でまみれてしまうけど、美味しい。俺は特に揚げ物が好きで、唐揚げ、コロッケ、メンチカツ、噛んで油にまみれていたいほどだ。

隣に座っていた郡司が、俺のお弁当を狙っている視線を感じた。唐揚げをもぐもぐしていた時、郡司が何やらスマホをこっちに向けていて、ピコンと動画が再生される音がした。

「え、あの、もしかして撮ってる?」
「いや、多々良、その」
「…郡司渉くんだよね」
「ごめん、多々良の事ずっと気になってて」
「え、なんで」
「多々良がご飯食べてる姿、可愛いくてつい」
「ついって何だよ」
「本当にごめん、そのー癒されるんだ、多々良に」
「癒されって、え」
「なんかリスみたいで、ほっぺたに詰め込んでんの」
「ああ、よく言われるけど」
「多々良、唐揚げもらってもいい?」
「うん、いいよ」

(待って、なんだこの展開、陽キャの郡司が俺の事癒されるとか、唐揚げ欲しいとか、何が起こってるんだ?)
郡司は多々良のお弁当から、唐揚げを取って食べる。

「ていうか、多々良いつも揚げもんばっかだよな」
「いつもって、郡司見てたの?」
「うん、いつも見てた」
「…そ、そうなんだ」

(いや、なーんか視線感じるなと思ったら、やっぱり郡司だったんだ、スルーしようかと思ったけどーやっぱりそうだったかー)

「多々良、唐揚げ好きなの?」
「うん、大好きだよ」

多々良の笑顔がキュートで、星が舞い散った。郡司はクラっと目眩がした。すると右にいたおじさんが多々良の服の袖を掴んでいて、多々良の視線はおじさんの方にむく。
郡司は、多々良の視線を追うと、多々良は口ぱくで何か言っている。

「あのさ、ずっと気になってたんだけど、多々良っていつも、誰といるの」
「見ての通り、一人だけど」
「いや、いつも誰かと話してるよな」
(え、気づいてた!?いやでもまだ、おじさんの事わかってないだろうし、まだセーフか)
「へ、いやー何のことかな」

郡司は多々良に接近して、多々良の耳もとまで近ずく。

「いるんだろ、見えない誰かが」
「え、いないよ…」
「小声だけど話してるの俺には聞こえてたし、多々良のこと知りたくて、俺はずっと見てたから」
「え、ずっとって?違うって、じゃあどんな話してたの?」
「昨日スラムエイトの漫画の話してただろ」

(バッチリ合ってる、昨日スラムエイトの漫画の話だった)

「…ち、違う、そんなんしてない」
「もうバレてるって、それに多々良の観察してたから」
「観察?それって」
「ほら」

郡司のスマホの動画には、多々良がお弁当を持って、1人で小声で話している姿が流れていた。俺は顔が真っ赤になって、両手で顔面を覆った。

「え、あ、なんで撮って…」
「本当にごめん、でも多々良の事どうしても知りたくて、これからはもう撮らないから」
「うん、まじやめて」
「ていうか、そいつは多々良の誰なんだよ、教えて欲しい」

(そこは興味あるんだ、怖くないのかな、もういっそ言ってしまおう、盛大に引いてくれ)
俺は深呼吸をして、話だした。

「友達だよ、おじさんだけど」
「おじさん?どんな人」
「セーラー服着てる、おじさん」
「セーラー服着てるおじさん?なにそれ」

郡司はびっくりして、大爆笑している。

「そうだよ、うそだよ、信じないでしょ?」
「いやそうじゃなくて、むしろめっちゃ気になるっていうか、見たい!」
「はい…見たいとは?」
「俺セーラーおじさんに会って見たい!」
「…え、うそまじで言ってんの」
「そりゃそうじゃん、どうやったらセーラーおじさん出てくるんだ」

普段のクールな郡司と違って、幼稚園児のようにワクワクして、はしゃいでいた。

「えーと、どうやってって言われましても…」
「どっかにいるのか」

郡司はキョロキョロして、教室中を見渡す。

「いやーここにいるんだけど」
「え、見えないけど」
「じゃあ、この話はもうおしまい、次の講義行くから」

多々良が席を立って行こうとすると、郡司は多々良を引き止めた。

「多々良、一生のお願い。俺にもセーラーおじさんに会わせて」
「はい?」
「多々良に見えて俺に見えないことはない、俺イケメンだし、自信しかないから」
「イケメン関係ないんだけど…」
「おねがい!まずは、多々良の保護観察をする」
「待って?保護観察」
「お前がいつもどういう行動して、どの状況でセーラーおじさんがいるのか、観察するんだ」
「ちょっと進めないで、ていうかいないから」
「安心しろ、セーラーおじさんに会ったらやめてやる」
「でも、郡司には見えないかもよ」
「いや、俺は負けず嫌いだし、絶対に、絶対に見てやる!」
「あとさ、この事だれにも言わないで欲しいんだけど」
「言わないよ、もちろん、だけど多々良の側にいていいって事だよね」
「え、側って」

郡司は、俺の両肩を強く掴んできた。

「まずは多々良と、ずっと一緒にいるからな」
「…え、ずっと一緒?」

郡司の保護観察は、授業中、昼休み、放課後、本当に俺とずっと一緒に行動するようになった。観察しては、周りをキョロキョロして、どうにかセーラーおじさんを探していた。
郡司は俺といる時だけ、クール郡司じゃなくてウキウキな幼稚園児みたいだ。

(っていうか俺だけに見えてるセーラーおじさんを、郡司が見れるようにするって、一体どうするんだよーー!??)