○ハルカスーパー・精肉コーナー
荒木洋大(28)と清水伊織(45)が、牛肉や鶏肉の陳列をしている。
左端に黒髪サラサラストレート美形、神田乙が精肉コーナーで、体育座りをしている。

清水「あのー荒木くんちょっといいかな、この間から思ってたんだけど、あれは誰ですか」
荒木「あ、清水さんも見えてたんですね、ずっといますよね」
清水「やっぱり、荒木くんも見えてたんだね」
荒木「はい、見えてました。ずっとですよね」
清水「なんか言うのが怖くて、コミュ障しちゃったよ」
荒木「いえいえ、こちらこそ、僕も気づいてはいたんです、気づいては、だけど、これは誰にも言ってはいけない、触れてはいけないと思っていましたから」

乙くんは、寝息をスースー立てて寝ている。
清水「最近寝てる事多いよね、本当に生きてるのかな」
荒木「寝息が聞こえます、息もしてます、人間ですよ」
清水「なんか、私たち別次元に来たみたいじゃない?」
荒木「わかります、僕たちはどこにいるんですか」
荒木「清水さん、この子と話して見ませんか」
清水「怖いよ、何されるかわからないでしょ」
荒木「でも、これじゃあずっとここにいると思います、ほら早く」

乙くんはむくりと、起き上がった。
清水「うわああああ、すみません」
荒木「あの、君大丈夫?」
清水「こんな所で何してるのかな?」
乙くんは清水と荒木を凝視していて、何も発さない。
荒木「びっくりしたよね、ごめんね」
清水「あなたは…生きて、いますか」
乙くんはそのまま笑顔で、清水の手を掴んできた。
乙「僕は乙くんです」
清水「乙くん…」
乙「僕のこと買ってほしい」
清水「はい?買うって何かな」
乙「僕はぬいぐるみなんだ、可愛いでしょ?」
清水「ぬいぐるみ?」
荒木「確かに、可愛い顔してますね」
乙「家においておくだけでもいいから、お願い」
清水「家に…置いておく」
清水は混乱していて、乙くんが言ったことをオウム返ししているだけだった。
乙「居場所がないんだ」
清水「だから、ここに」
乙「うん、ここは出会いの場だからね」
荒木「出会いの場って誰か待ってたの」
清水「ちょっと、荒木くん」
乙「そうだよ、君たちを待ってたんだ」
清水「買うって、どうやって買うの?」

乙くんが、服をまくるとお腹には、3点バーコードがくっきり入っていた。
清水「うわーなな、何これ?」
荒木「清水さん、試しに、乙くん買いましょうよ」
清水「え、何で私なの、荒木くんが買ってよ」
荒木「僕は無理です、彼女いるんで」
清水「いるんだ、彼女」
荒木「はい、本当に可愛いんですよ」
清水「うわーのろけてるのいいから」
荒木「見てください、めっちゃ大好きなんです」
清水「え、今?」

荒木のスマホの写真には、ウーパールーパーが写っていて、清水の笑顔が消えて硬直していた。
荒木「きなこちゃんです」
清水「え…」
荒木「僕たち付き合ってます」
清水「…あの、荒木くんどうした、おかしくなった?」
荒木「どうしましたか?清水さん」
清水「普通じゃないでしょ、動物と恋人なんて」
荒木「何ですか普通って、大体清水さんは恋人がいないですよね、今までお付き合いしたこともない痴女が、乙くんを買えばいいじゃないですか」

乙くんは、助けてほしいと上目使いで清水のことをみている。荒木は清水を、犯罪者のように軽蔑したような目でみていた。

清水「…わかりました、買います」
荒木「うん、それがいいです」
清水「荒木くん普通って何かな…」
荒木「えー?楽しいですね」

乙くんは満面の笑顔で、お腹のバーコードを見せた。清水はレジのバーコードを乙くんにかざすと、乙くんはしゅわっとした気持ち悪い笑顔だった。