無気力男子の空城は俺の前だとバグるんだけど

高校2年になった初日。俺は新しい自分になった。ブレザーにパンツ、髪の毛は短髪黒、ビー玉見たいなクリクリした目をしている。双海光瑠、もちろん男子だ。

高校1年の俺はボブ髪で、よく女子に勘違いされていた。しかも隠キャ寄りだったので、特に目立つこともなくスクールカーストの中間くらいで、中学からバスケ部で一緒の森崎奏多と中谷牡馬はそんな俺と一緒のクラスで、居心地が良かったから周りのことなんて気にしなかったんだけど。

クラス替えが決まった電光掲示板を見て、絶望した。誰も、誰も友達がいないからだ。また一から関係を築く勇気が必要で、もういっそ一人でいる方が楽かも。クラスの皆はぼっちにならないように、早々にコミュニケーションを取っている。話かけに行かないと、なんて思っているだけでやっぱり話に行く勇気が出ない。キョロキョロ周りを見たけど、諦めて、窓側後から2番目の席に座った。

後ろの席から、ガタンと音が鳴った。後ろは誰だろうと思って振り返ってみると、この学校で有名な空城類だ。金髪クールで空城類はいつも無気力で寝ている。桜浜高校では、無気力系王子様、空城類と断言されている。空城類の周りには1軍男子友達が集まっているし、女子からはダントツ人気だ。

「おっすって誰?双海だっけ」
「ああ、うん」
「なんか、雰囲気かわった?」
「確かに!双海切ったらイケメンじゃん」

俺の隣の席は、黒髪さらさらストレートで目がキリッと凛々しい、安藤宗賀。その後の席は、くるくる天然パーマで天真爛漫の高梨玲矢。えーなんか俺、キラキライケメンに囲まれてるんだけど、、どうしよう。

「2年になる前に髪、切ったんだ」
「双海、ボブだったからギャップえぐい」
「いいじゃん」

「ああ、安藤くんって、天性の陽キャで、クールのギャップが最高」
「いや、高梨くんのエクボだよ、くるくる天パで天真爛漫で可愛すぎる、もう心臓もたん」
「待て待て待て、この世のイケメン界隈の中心、無気力系王子様の空城類くんしか勝たん」

女子からはやっぱり陽キャ1軍様コールが続いている。俺がここにいていいのか。。
すると後ろから、俺の肩に手が置かれた。空城類が珍しく起きている。

「双海だよな…?」
「え、あ、空城くんだよね。よく気づいたね」
「あのさ、ボブに戻してほしい」
「はい?何で」
「…いや、それは、双海って女子だよな」
「え、いや男だけど」
「まじで…」
「え、うん」

空城類は俺を見て、びっくりしすぎて固まっていて、顔も真っ赤だ。安藤と高梨も入ってきた。

「ポンコツ類くん、クラスメイトに興味持つなんて初めてじゃない?」
「類はもっと、みんなに興味を持たないと何かと置いてかれるって、キャンセル界隈すぎだから」

(キャンセル界隈…確かに安藤と高梨しか話してるのみたことないし、授業中は基本寝てるし、無気力でもっとクールだと思ってたんだけど、何この感じ)

「そうだったんだ、、双海って可愛い顔してるんだな」
「ああ、どうも」
(空城類どうした、急に褒めてきて、何なんだ)

空城は、俺のほっぺたをぷにゅっと摘んできた。
「…え」
「いや、可愛いしかない。ていうかほっぺぷにぷに」
「ちょっと…空城」
「類さーん、距離感バグってるって」
「もしかして、眼中に入った系?」

安藤宗賀が、止めに入る。
「双海、こいつ眼中に入ったらのめり込むから、覚悟しとけよ」
「え、覚悟って…」
「ごめん、ついウーパールーパーみたいで可愛かった」
「ウーパールーパー?」
(それは褒めてるのか、ツッコミを待ってるのか?)
「そうだ、双海って放課後空いてる?一緒に付き合ってほしいんだけど」
「へ?何するの」
「そうじゃん、僕たち色々大変なんだよー」
「あーまじで双海頼むわ」
高梨と安藤はお願いしてくる。こんな頼まれたことないんだけど。で、また空城類は眠ってるし。
(ていうか、なんで、俺なの!?)

*****
茜浜海岸沿い、波が太陽に照らされてキラキラ輝いている。隣には別次元の三人のイケメン、安藤、高梨、空城。なんか眩しすぎて、俺はどこの次元に連れてこられたんでしょうかー。

「運動神経抜群でバスケ部エースの、双海くんにお願いがあるんだけど」
「体育祭までに類の運動音痴を治してくださーい」

安藤、高梨が俺に頼んできた。

「え?運動音痴って空城が?」
「こいつ、いつも体育休んでるだろ、走る姿見られたくないから休んでるの」
「ち、ちがうから」
「そうなの、意外っていうか」

高梨は砂を蹴りながら、砂と遊んでいる。
「類はさ、高校で一回も体育祭出たことないし」
「最後の体育祭は、一緒に出たいんだ」
「…まあ、宗賀と玲矢がいうなら」
「うんうん、思い出たくさん増やさなきゃ」
安藤と高梨は真剣なようだ。

「類は音痴すぎて、スキップも変なんだよ〜」
「スキップ?」
「ほら、類やってみろ」
「…笑うだろ」
「類、君のイケメンに誓って笑わない」

空城類は身体と手足の動きが同じで、ぎこちないスキップを披露する。

「あはっっはっはいい感じ!」
「笑ってんじゃねースキップってなんなんだ、あーどうやるんだよ」
安藤と高梨は隠すようにして笑って、空城は海砂の上でふらふらして赤面している。
俺はこの状況に驚いていた。

(嘘だろ、空城のこんな感情出してるの初めて見た、無気力系っていうか、全然違うじゃん)

「俺たちたまに、走る練習手伝ってあげてるってわけ」
「どうにも、こうにもって感じーだから、双海お願い!類の走り見てあげて」
「類、向こう側からこっちに走ってきて」
「えーだって変だから」
「いいから、走ってきて」

空城類は向こう側まで行って、走ってきた。
走り方はガニ股で、こっちに迫ってくるとき、ホラーみたいでマジで恐怖だった。

「おっとーホラーより、こえーわ」
「なんかでっかいカニみたいで、可愛いじゃん」
「弱点は見えた、空城、足はまっすぐ上向きに上げて走って、ちゃんと前向いて」
「こうか」
「下見ないで、真っ直ぐこっちに走ってきて」

すると、空城は足を上げて、まっすぐに走ってきた。ゆっくりだけど走り方が断然良くなった。

「さっきよりはいいじゃん」
「ないすー」
「もっと、練習すれば変わるよ」
「さすがバスケ部エース、双海」
「ていうか、空城いつもと違うから、なんかバグる」
「そうだよなー俺らもこのギャップにビビる。でもなんか見てて面白いっていうか」
「保護したくなるっていうかねえ」
「だけど、空城って真剣に向き合うと一途っていうか、一生懸命なんだよな」

教えたフォームで、空城がずっと、往復して走っている。
(本当だ、こんなに真剣に、これが本当の空城類なんだ)

高梨、安藤も空城について行き、思いっきり走って応援していた。俺も追いかけるようにして駆け出すと、すぐに空城に追いついた。はあ、はあ、はあ、と息切れしている空城は悔しそうだが、爽快な顔をしていた。

「双海、なんか、走るっていいな」
「うん、気持ちいいでしょ」
「あのさ、よかったらたまにでいいから教えてほしい、音痴治るように」
「え?俺が」
「双海、俺たちからもまじお願い、最後の体育祭盛り上げたいし」
「うんうん、カニ競争でも面白そうだけどね」
「それは、バカにしすぎ」
「ごめんごめん、類と一緒に走りたいからだよお」
「わかった、じゃあ、また練習しよう」
「え、双海いいの、でも俺、走るのも変だし、それになんかこんなの見られて恥ずいっていうか。。」

(また混乱して、なんかバグってるんだけど、本当にあの無気力系王子様の空城類なのか)

「大丈夫だよ、練習あるのみ。最後だし体育祭出ようよ!俺がかっこいい空城にしてあげる」

うおーパチパチパチと、高梨と安藤が尊敬の眼差しで、拍手していた。

「頼もしいわあ、双海って童顔だけど、まじかっこいい」
「えー僕と双海、どっちが可愛い?」
「はあ?意味わからん、安藤は可愛くねーよ」
「可愛いだけの僕じゃだめ?」
「うっせー」

高梨と安藤が波際で言い合いしながら水を掛け合っている。水滴が空城と双海にもかかる。

「冷た!こっちにかけんな」
「逃げろにゃー」

高梨が爆笑して、スマホで動画撮影していた。
「ていうか充電ないニキなんだけど、そろそろ帰るか」
「オッケー」

皆んなと帰ろうとすると、空城の足がもつれたのか盛大に砂に転けて仰向けになっていた。

「え、空城大丈夫?」
「双海…俺で本当にいいの?こんなだから隠してたのに」
(またバグってる、明らかに顔真っ赤だし、こんな空城初めてみる)
「ほら、何言ってんの」

俺は、空城の手を引いて起こすと、体重が俺にかかり抱き締められた。

「おおお、空城大丈夫?」
「ああ、えっとー」
空城が、そのままぎゅっと強く抱き締めてきた。

「俺のこと、守ってくれる?」
「え…守るって…」
「おーと類くん、またバグってるよ」
「あーミスった、今日はここまでにしておく」
「今日はって」
「双海は友達だから」
「…友達、そっか、、ありがとう」
「類、双海、アイス食べいこ〜」

空城類に関わったら1軍の友達になった。だけど、空城は明らかに俺の前では見たこともない空城で、いつもの無気力系王子様なんかじゃない。本当の空城は少しバグっていて、ギャップってこういう事?これって、本当に1軍の友達になったって事で本当にいいの?なんか俺までバグってきたんだけどーー!?