自販機で飲み物を買い、適当に散歩でもしようかと話しているうちに音無の姿が消えていた。
「あれ? 音無どこいった?」
「さっき女子に連れていかれた」
「ごはん分けるかわりに自由時間一緒に過ごしてほしいって言われてたんだって」
「えぇ、人身御供じゃねぇか」
「ひとみごくう??」
「生け贄ってことだよ」
「ちょっと様子みてくるわ」
「大丈夫だろ。いつも女子に囲まれてんだから、そういうの慣れてんじゃね?」
「慣れてたとしても、嫌だと思ってるかもしんねぇだろ」
音無を探しに、湖まで続く遊歩道を歩いていると、途中のベンチで音無と女子が座っているのがみえた。
「好きです。つき合ってください」
女子の告白する声が聞こえて、慌てて身を屈める。
「……ごめんね、今は誰ともつき合う気がないから」
「……そうなんだ……理由、きいてもいい?」
「ちゃんと好きになってからつき合いたい。じゃないと、傷つけちゃうから」
「……意外だな。音無くんって来るもの拒まずだから、誰でもいいのかと思ってた」
「……うん、ごめんね」
女子が静かに去っていき、俺もさっさと退散しようとそっと立ち上がる。
「瀬川くん、盗み聞き?」
声をかけられてびくっと肩が震え、恐る恐る振り返ると、にこやかな笑みを張り付けている音無が手招きしていた。
ため息をついて、どすっと音無の隣に座る。
「……悪かった。聞くつもりはなかったんだけど」
さっき自販機で買ったサイダーを手渡すと「ありがとう」と笑って受け取った。
「……さっきの、来るもの拒まずっていうのは」
「あぁ、中学の頃は断るのが面倒で、告白されたらとりあえずつき合ってたんだけど、長続きしなくてすぐに別れちゃってたから……ちゃんと好きになれなくて相手を傷つけちゃうから、そういうのはやめようと思って」
「ふ〜ん、色々と大変だったんだな」
俺はペットボトルのフタを開けてスポーツドリンクを喉に流し込む。隣で音無がふふっと笑みをこぼした。
「なんだよ?」
「いや、こういう話すると、羨ましがられたり嫌味を言われたり、からかわれたりするんだけど……瀬川くんは違うんだなと思って」
「……まぁ、受け取り方は人それぞれだけど。さっきの口ぶりからして、音無にとってはしんどいことなのかなって思ったから」
「そっか……やっぱりいいね、瀬川くんは」
「いい?」
「ふふっ、こっちの話」
なにが『いい』のかよくわからないままスポーツドリンクをごくごくと流し込む。音無は俺の持っているペットボトルをじっと見つめた。
「それよりさ、俺、炭酸飲めないからそれと交換してよ」
「え、俺も飲めねぇんだけど」
「なんで買ったの……」
「適当だよ。音無の好きなやつわかんなかったから」
「まぁいいや。それ、ちょーだい」
「これ口つけちゃってるしな〜」
「俺はべつに大丈夫だけど」
「そうか?」
もう半分ほど飲んでしまったスポーツドリンクを音無に手渡す。音無はそれを少し口に含み、首をかしげた。
「ん?? なんかこれ甘くない?」
「へ? べつに普通だったけど」
「飲んでみてよ! ちょー甘いから」
促され、俺も少し口に含む。
「……ん〜? よくわからん」
「えー! 絶対甘いって!」
少し間を置いてから、音無が遠慮がちに口を開いた。
「……瀬川くんはさ……好きな人とか、いないの?」
「……べつに、いないけど」
「……そっか」
音無はそれきり黙って湖へ視線を向けた。俺もつられるように湖を見る。
二人でぼんやりと座っていると、下野と真中がこちらに向かって歩いてきた。夕飯まで時間があるので、四人で湖畔を散策することになり、俺たちはベンチから立ち上がった。
「あれ? 音無どこいった?」
「さっき女子に連れていかれた」
「ごはん分けるかわりに自由時間一緒に過ごしてほしいって言われてたんだって」
「えぇ、人身御供じゃねぇか」
「ひとみごくう??」
「生け贄ってことだよ」
「ちょっと様子みてくるわ」
「大丈夫だろ。いつも女子に囲まれてんだから、そういうの慣れてんじゃね?」
「慣れてたとしても、嫌だと思ってるかもしんねぇだろ」
音無を探しに、湖まで続く遊歩道を歩いていると、途中のベンチで音無と女子が座っているのがみえた。
「好きです。つき合ってください」
女子の告白する声が聞こえて、慌てて身を屈める。
「……ごめんね、今は誰ともつき合う気がないから」
「……そうなんだ……理由、きいてもいい?」
「ちゃんと好きになってからつき合いたい。じゃないと、傷つけちゃうから」
「……意外だな。音無くんって来るもの拒まずだから、誰でもいいのかと思ってた」
「……うん、ごめんね」
女子が静かに去っていき、俺もさっさと退散しようとそっと立ち上がる。
「瀬川くん、盗み聞き?」
声をかけられてびくっと肩が震え、恐る恐る振り返ると、にこやかな笑みを張り付けている音無が手招きしていた。
ため息をついて、どすっと音無の隣に座る。
「……悪かった。聞くつもりはなかったんだけど」
さっき自販機で買ったサイダーを手渡すと「ありがとう」と笑って受け取った。
「……さっきの、来るもの拒まずっていうのは」
「あぁ、中学の頃は断るのが面倒で、告白されたらとりあえずつき合ってたんだけど、長続きしなくてすぐに別れちゃってたから……ちゃんと好きになれなくて相手を傷つけちゃうから、そういうのはやめようと思って」
「ふ〜ん、色々と大変だったんだな」
俺はペットボトルのフタを開けてスポーツドリンクを喉に流し込む。隣で音無がふふっと笑みをこぼした。
「なんだよ?」
「いや、こういう話すると、羨ましがられたり嫌味を言われたり、からかわれたりするんだけど……瀬川くんは違うんだなと思って」
「……まぁ、受け取り方は人それぞれだけど。さっきの口ぶりからして、音無にとってはしんどいことなのかなって思ったから」
「そっか……やっぱりいいね、瀬川くんは」
「いい?」
「ふふっ、こっちの話」
なにが『いい』のかよくわからないままスポーツドリンクをごくごくと流し込む。音無は俺の持っているペットボトルをじっと見つめた。
「それよりさ、俺、炭酸飲めないからそれと交換してよ」
「え、俺も飲めねぇんだけど」
「なんで買ったの……」
「適当だよ。音無の好きなやつわかんなかったから」
「まぁいいや。それ、ちょーだい」
「これ口つけちゃってるしな〜」
「俺はべつに大丈夫だけど」
「そうか?」
もう半分ほど飲んでしまったスポーツドリンクを音無に手渡す。音無はそれを少し口に含み、首をかしげた。
「ん?? なんかこれ甘くない?」
「へ? べつに普通だったけど」
「飲んでみてよ! ちょー甘いから」
促され、俺も少し口に含む。
「……ん〜? よくわからん」
「えー! 絶対甘いって!」
少し間を置いてから、音無が遠慮がちに口を開いた。
「……瀬川くんはさ……好きな人とか、いないの?」
「……べつに、いないけど」
「……そっか」
音無はそれきり黙って湖へ視線を向けた。俺もつられるように湖を見る。
二人でぼんやりと座っていると、下野と真中がこちらに向かって歩いてきた。夕飯まで時間があるので、四人で湖畔を散策することになり、俺たちはベンチから立ち上がった。



