嘘から始まる推しとの恋。

一週間後

矢ノ原翔太:【それじゃあ、行こうか】

篠崎彩奈:『っ……はいっ…!』

矢ノ原翔太:【本題に入るけどさ、新しいイラスト制作に悩んでるなら男の子シリーズでこれから俺と行く場所とかシチュエーションを参考にして描いたらええんちゃう…?】

篠崎彩奈:『確かに……その案良い…それにします!!!』


水族館の駐車場で矢ノ原くんに手を握られたまま、本館へ向かう…。

今まで妄想でしかしてこなかったことが、こうして現実になると、夢ではないことに気づき余計胸がドキドキするし、矢ノ原くんにこの鼓動が聞こえてしまったらかなり恥ずかしい。


矢ノ原翔太:【ほな、決まりやね】

篠崎彩奈:【はい……!】

【矢ノ原翔太】:【あ、てか君の名前教えてくれへん?
なんて言えばいいか分からへんから笑】

篠崎彩奈:【……篠崎彩奈って言います
呼び方は何でも大丈夫です笑】

【矢ノ原翔太】:んー、じゃあ…彩奈って呼んでええ…?

【篠崎彩奈】:えっ……?!あっ………はい!照

推しに呼び捨てされたことで私は嬉しさのあまり、返す言葉がしどろもどろになってしまった。

【矢ノ原翔太】:じゃあ俺のことも翔太って呼んでええよ

【篠崎彩奈】:へっ………!?
いやいやいや、それは……照

【矢ノ原翔太】:あはは、冗談やで。
彩奈の好きなように呼んでええから笑

【篠崎彩奈】: ………や、矢ノ原くんっ……

【矢ノ原翔太】:おー、苗字にくん付けかぁ。
でもその距離感やと俺らが偽恋人だってバレてまうなぁ?

【篠崎彩奈】:では……翔太っ…翔太くんで…!

【矢ノ原翔太】:ははっ、OK
あと、タメで話してくれると嬉しいな

あ、そっか。確かに、偽恋人というふりをしているのに私だけ敬語だったら周りから見て違和感でしかないし関係が怪しまれてしまうかもしれない。

【篠崎彩奈】:わかりました!
あっ…違う……わかった笑

【矢ノ原翔太】:あはは、やっぱり彩奈はおもろいな

【篠崎彩奈】: ……え!?笑

【矢ノ原翔太】:なんか不慣れな感じが可愛いっていうか?笑

【篠崎彩奈】: へ

【矢ノ原翔太】:でも今はさ、彩奈の新しいイラスト制作のためのシチュエーション作りなんやし緊張せんと楽しも



翔太くんは水族館の受け付けで観覧チケットを貰いながら、私の緊張を言葉だけで解してくれた。

----------そうだ、もっと彼女っぽくならなきゃ。
ずっと緊張していては私のイラスト制作にここまで付き合ってくれてる翔太くんにも失礼になっちゃうし、何より拒否ることもできた提案に乗ったのは私なんだから。

今日は翔太くんの隣を堂々と歩こうと背筋を伸ばし、1階の深海への旅 個水槽まで向かった。


【矢ノ原翔太】:わぁ、魚さんたち綺麗やなぁ。今日沖縄まで来れてほんまによかった。……あ、ごめん彩奈の新しいイラスト制作のために来たのに忘れてまいそうやった

なんか、ええシチュエーションできそ?

【篠崎彩奈】:んー……今日のことをそのまま描いてみる。思い出として描いたら、新しい作品になるかなって


私も"魚を見つめる翔太くんに見惚れて、新しいイラスト制作のシチュエーション探しを忘れていたからきっと同じ。

魚より窓越しに映る翔太くんのほうが綺麗だよ、と思いながら言えるわけもなく他の展示を見ながらシチュエーションを明確に考えていた。


【矢ノ原翔太】:お、それええね。
……あぁ、彩奈の最新作楽しみだなぁ笑

【篠崎彩奈】:もぅ…ありがたいけど、
それプレッシャーぁ笑

【矢ノ原翔太】:えーなんでよ
だって楽しみなんやから仕方ないやんか

【篠崎彩奈】:でも私の新しい作品に期待してくれてて
嬉しかったのは否めないですけど……!


2階の展示室に行くまで、手を繋ぎながら歩き、気づけば新しいイラスト制作のことで話が盛り上がっていた。

だけど、その途中 誰かが翔太くんの肩を叩く。

【??】: ……矢ノ原だよな?

声をかけられたことに気が動転したのか、翔太くんは喋らなくなってしまった。

その人に警戒する様子はなく、もしかして声をかけてきたのは翔太くんの知り合いなのだろうかと推測する。

"KANSAI REVOLUTION(カンレボ)のファン"ではなさそう。だってなかなか、推しを名字呼びする人はあまりいないし。

……一体この人は誰?そしてこの"不穏な空気"は何…?
これが、ただならぬ状況ではないことは確かだった。