翌朝の朝食後、ダイチは連絡船で帰っていった。
みんなは、合宿所の入り口である昇降口で見送った。泣きそうなミツキと違い、ほかの参加者はカラッとしていた。「また帰ったら会えるんだし」「スマホ取り返したらSNSフォローするわ」と口々に言って、笑顔で別れる。
その間際、ダイチがユウを呼んだ。一緒に作った「ユウぬい」を手荷物から取り出し、渡す。
「これはユウが持ってて。昨日は本当にありがとう」
そして、受け取ろうとしたユウの腕を掴んで引き寄せると、ぎゅっと抱きしめた。
「待って、今さら泣けてきた」とソウタ。
ふたりはずいぶん長いこと抱き合っていた。そのあいだ、ダイチはユウの耳元でなにかを囁いているようだった。
一緒にトラブルを乗り越えた仲だし、伝えたいことがたくさんあるんだろうな。そう思ったけれど、突然の湿っぽい雰囲気に、ミツキはなんだか意外な感じがした。
ダイチがスタッフの運転する車に乗り込んで、その車が見えなくなるまで手を振って、それから四人は自然な流れで昇降口に貼り出された昨日のコメントを眺めた。
意外なことに、ミシンの針が折れた件についてのコメントはほとんど見られなかった。ほかのミシンには針が付いていなかったことの不自然さを指摘するコメントや、ダイチの不運に同情するようなコメントは皆無。
「……」
ポジティブなコメント以外は削除する方針にしたんだろうか? と思ったけれど、その投稿よりも少し前の時刻、ミツキとユウの喧嘩についてはさまざまな憶測が飛び交い、ほとんどレスバトルのようになっている。自分を擁護するコメントが多くてうれしい一方で、憶測で叩かれるユウをかわいそうだと思った。
ミツキは、隣に立つユウをちらりと見た。ユウは険しい顔をしてコメントを眺めていた。
*
合宿五日目、三つめの課題は「自給自足バーベキュー」だった。
「この島で獲れる食材のみで、明日の夜にバーベキューをやってもらう。豪華な晩餐になるか、わびしい食事になるかは、きみたち次第だ」
ノブナガは、自身の前に並んだ釣り道具一式と、農作業用のつなぎ、麦わら帽子、自転車の鍵を示した。
「『自給自足』というのは言葉の綾で……もちろん、この島に短期滞在しているだけのきみたちに農作物や畜産物が作れるはずもない。そこが頭の使いどころだ」
パン、と彼の両手を合わせる音とともに、課題がスタートした。
「釣り道具があるってことは、釣りはできるんだよな」
ノブナガが出て行った食堂の扉を見つめ、ルイが言う。
「連絡船から降りたところに堤防があった。この道具なら、そこでサビキ釣りができるんじゃないかな」
ミツキの言葉にみんな首を傾げる。
「サビキ釣り……?」
「たくさん針のついた仕掛けを使って、撒き餌でおびき寄せた魚を……」
「よし、ミツキが釣り担当!」
言葉の途中で、ソウタがミツキの肩を抱く。家族に連れられて何度か釣りをしたことがあるだけだけど、この中でもっとも経験があるのは自分のようだ。ミツキは「わかった」とうなずく。
「そういや、港からちょっとバスで行ったところに農産物直売所があった」
ユウがつぶやく。
「でも、食材は買っちゃいけないルールなんだよな」
「カネ以外のなにかを提供するか?」
ルイが悩ましげに眉をひそめる。
「なにかって?」
「カラダとか?」
ユウの悪い冗談に、同時に尋ねたソウタが「むう」と顔をしかめる。
「……まあでも、それしかねえかもな」
「おいおい」
まさかのルイに肯定されて、ユウも慌てたような声をあげた。
「ちげえよ、労働力ってことだよ。たぶんだけど……こういう島で農作物を作ってるのって、年寄りが多いんじゃないか。そしたら人手が足りなくて困ってたりするかも。別に農作業だけじゃなくて、普通に家の片づけとか修理とかそういうの」
「なるほど……」とうなずきながら、この中で適任は誰だろうとミツキは考えた。
「オレ、行くわ」
ルイの立候補に「え?」と声をあげたのは、ソウタだった。
「まずはその直売所に行って、事情を話してみる。そしたら協力してくれる農家の人がいるかもしんねえし」
「ん〜」
ソウタが腕を組んで、困った顔をする。
「なんだよ。オレ、こう見えてばあちゃん子だったし、年寄りには気に入られるほうなんだけど」
「そうか〜、そうなのか〜。でもその髪色とピアスは怖がる人もいるかも〜」
ソウタはうんうん唸ったあと、「俺が一緒に行くよ!」とにっこり笑った。
「ピカピカの健康優良児! って感じの俺が一緒なら、たぶん怖がられないでしょ」
「そしたら……」
ユウがこちらを見る。ミツキはドキドキしながら口にした。
「うん。俺と一緒に釣りしましょ」
ユウが「よろしく」と微笑んだ。
なんで俺、ドキドキしてるんだろう? と、ミツキは一拍遅れて思った。
*
提供されたママチャリを漕いで港まで向かうと、汗だくになった。
堤防の端で、潮風に吹かれながら日焼け止めを塗りなおす。クーラーボックスに入れていたペットボトルの水を飲む。しばらくするとこのクーラーボックスには釣った魚が入る予定なので、キンキンに冷えた水を飲めるのは今だけの贅沢だ。
ぷはー、と満足の息を吐いて、陽射しを弾く海を見つめる。
隣に立つユウが、「俺、カナヅチなんだ」とつぶやいた。
「俺は一応、泳げますけど……ライフジャケットも着てるから、大丈夫じゃないかな」
そう応えながら、素直に弱みを見せてくれるようになったんだと思うとうれしかった。
「水泳やってたの?」
ユウが尋ねる。ミツキはわざと遠い記憶を探るようにして答えた。
「んー……中学では水泳部でした。先輩にいじめられて辞めちゃったけど」
プールに沈められて、どんなに抵抗しても離してもらえなかった。顧問に相談しても「ふざけてるだけ」と一蹴された。今でも長い時間、水に潜るのは怖い。
ぽつぽつと語ると、ユウは「そいつら、最低だな」と吐き捨てた。
それで、ユウに触られたときも同じように怖かったことは伝えなかった。
ユウが自分のために怒ってくれたことで、あのいじめと昨日のできごとは違うんだとわかったから。
長袖のウィンドブレーカーを羽織って、帽子をかぶって、折り畳みの椅子やバケツをセットする。ここまでふたりはママチャリで来たけれど、大量の荷物はさすがにスタッフが運ぶのを手伝ってくれた。
「オキアミって独特な匂いだな」
「『おいしそう』と『くさい』のあいだの、めちゃくちゃ『くさい』寄りって感じですよね」
「それ」
「針いっぱいついてるから、リール絡まないように気をつけて」
仕掛けを投げ入れたあとは、糸をゆっくり巻き上げたり、竿を上下させたりして、撒き餌で魚群を呼び寄せる。「想像よりも忙しい」とユウは言ったけれど、それでも待つ時間が長い。
話ができるかなと思った。
仲直りはしたつもりだけど、カメラの前でしたわけじゃないから、視聴者のユウへの誤解はまだ解けていないはずだ。自分たちが仲良く話をしている姿を見せれば、伝わるものがあるかもしれない。
だけど、自分を偽って演技をしたいわけじゃない。ユウもそれは嫌がるはずだ。
訊きたいことを訊こう。
「ユウさんって……」
「あのさ、敬語じゃなくていいよ」
出鼻をくじかれた。ユウは、ちょっといたずらっぽく笑って続けた。
「昨日の喧嘩のとき、タメ口だっただろ? あっちのほうがおまえの素っぽくて、安心する」
「安心?」
「いい子ちゃんのおまえにも、性格悪いところあるんだなーって」
やっぱり意地悪だ、見直して損した。ミツキは、むうと唇を尖らせた。
「ユウさん……じゃない。ユウってさ。俺のこと、まだ嫌い?」
ユウは即答した。
「嫌い」
「えっ」
思わず糸の先から目を離して、ユウの顔を見てしまう。ユウもこちらを見返して、「ふふ」と笑った。
「嘘だよ」
「嘘はつかないって言ったくせに」
「だから本当のことを教えてるだろ。……そうやって、なんでも真正面からぶち当たってみるところ、嫌いじゃない」
長い前髪の下で、ミツキの姿を捉えた瞳が細められる。それは、どこかいとおしげな眼差しだった。
胸がぎゅうとした。
どうして俺をそんな目で見るんだろう。ユウに顔がかわいいと言われたことはあるけれど、こんなのは、まるで……。
ミツキは海面に視線を戻す。次の質問を考えて、心臓の鼓動が速くなる。一度、意識して鼻から息を吸った。
なによりもいちばん、知りたかったこと。
「あのさぁ……ユウって昔、動画配信やってたこと、ある? 『歌ってみた』とか、アップロードしてたり……」
ようやく訊けた。カメラの前だから曖昧な表現になってしまったけれど、ユウにはなにを訊きたいのかわかったはずだ。
答えの返ってくるまでの一瞬が、永遠にも思えた。ドキドキして、竿を握る手が震える。
「あるよ」
ミツキは、ふたたびユウを見た。潮風が頬を撫でていく。ユウは間髪入れずに「嘘だよ」とまた言った。
「ネットに歌をあげたことは一度もない」
だけど、その表情でわかってしまった。見ているこちらがまぶしくて目を逸らしたくなるような、やさしい笑顔。
やっと会えた。
【配信コメント】
ハグ長くね?
なに話してるんだろ
〈コメントは削除されました〉
マイク音拾えよw
下ネタw
ルイくん冴えてる
ミツキくん、コミュ強ぽいのにいじめられてたんか…
ユウ、ツンデレにも程がある
ユウVSinger説、違ったじゃんw
みんなは、合宿所の入り口である昇降口で見送った。泣きそうなミツキと違い、ほかの参加者はカラッとしていた。「また帰ったら会えるんだし」「スマホ取り返したらSNSフォローするわ」と口々に言って、笑顔で別れる。
その間際、ダイチがユウを呼んだ。一緒に作った「ユウぬい」を手荷物から取り出し、渡す。
「これはユウが持ってて。昨日は本当にありがとう」
そして、受け取ろうとしたユウの腕を掴んで引き寄せると、ぎゅっと抱きしめた。
「待って、今さら泣けてきた」とソウタ。
ふたりはずいぶん長いこと抱き合っていた。そのあいだ、ダイチはユウの耳元でなにかを囁いているようだった。
一緒にトラブルを乗り越えた仲だし、伝えたいことがたくさんあるんだろうな。そう思ったけれど、突然の湿っぽい雰囲気に、ミツキはなんだか意外な感じがした。
ダイチがスタッフの運転する車に乗り込んで、その車が見えなくなるまで手を振って、それから四人は自然な流れで昇降口に貼り出された昨日のコメントを眺めた。
意外なことに、ミシンの針が折れた件についてのコメントはほとんど見られなかった。ほかのミシンには針が付いていなかったことの不自然さを指摘するコメントや、ダイチの不運に同情するようなコメントは皆無。
「……」
ポジティブなコメント以外は削除する方針にしたんだろうか? と思ったけれど、その投稿よりも少し前の時刻、ミツキとユウの喧嘩についてはさまざまな憶測が飛び交い、ほとんどレスバトルのようになっている。自分を擁護するコメントが多くてうれしい一方で、憶測で叩かれるユウをかわいそうだと思った。
ミツキは、隣に立つユウをちらりと見た。ユウは険しい顔をしてコメントを眺めていた。
*
合宿五日目、三つめの課題は「自給自足バーベキュー」だった。
「この島で獲れる食材のみで、明日の夜にバーベキューをやってもらう。豪華な晩餐になるか、わびしい食事になるかは、きみたち次第だ」
ノブナガは、自身の前に並んだ釣り道具一式と、農作業用のつなぎ、麦わら帽子、自転車の鍵を示した。
「『自給自足』というのは言葉の綾で……もちろん、この島に短期滞在しているだけのきみたちに農作物や畜産物が作れるはずもない。そこが頭の使いどころだ」
パン、と彼の両手を合わせる音とともに、課題がスタートした。
「釣り道具があるってことは、釣りはできるんだよな」
ノブナガが出て行った食堂の扉を見つめ、ルイが言う。
「連絡船から降りたところに堤防があった。この道具なら、そこでサビキ釣りができるんじゃないかな」
ミツキの言葉にみんな首を傾げる。
「サビキ釣り……?」
「たくさん針のついた仕掛けを使って、撒き餌でおびき寄せた魚を……」
「よし、ミツキが釣り担当!」
言葉の途中で、ソウタがミツキの肩を抱く。家族に連れられて何度か釣りをしたことがあるだけだけど、この中でもっとも経験があるのは自分のようだ。ミツキは「わかった」とうなずく。
「そういや、港からちょっとバスで行ったところに農産物直売所があった」
ユウがつぶやく。
「でも、食材は買っちゃいけないルールなんだよな」
「カネ以外のなにかを提供するか?」
ルイが悩ましげに眉をひそめる。
「なにかって?」
「カラダとか?」
ユウの悪い冗談に、同時に尋ねたソウタが「むう」と顔をしかめる。
「……まあでも、それしかねえかもな」
「おいおい」
まさかのルイに肯定されて、ユウも慌てたような声をあげた。
「ちげえよ、労働力ってことだよ。たぶんだけど……こういう島で農作物を作ってるのって、年寄りが多いんじゃないか。そしたら人手が足りなくて困ってたりするかも。別に農作業だけじゃなくて、普通に家の片づけとか修理とかそういうの」
「なるほど……」とうなずきながら、この中で適任は誰だろうとミツキは考えた。
「オレ、行くわ」
ルイの立候補に「え?」と声をあげたのは、ソウタだった。
「まずはその直売所に行って、事情を話してみる。そしたら協力してくれる農家の人がいるかもしんねえし」
「ん〜」
ソウタが腕を組んで、困った顔をする。
「なんだよ。オレ、こう見えてばあちゃん子だったし、年寄りには気に入られるほうなんだけど」
「そうか〜、そうなのか〜。でもその髪色とピアスは怖がる人もいるかも〜」
ソウタはうんうん唸ったあと、「俺が一緒に行くよ!」とにっこり笑った。
「ピカピカの健康優良児! って感じの俺が一緒なら、たぶん怖がられないでしょ」
「そしたら……」
ユウがこちらを見る。ミツキはドキドキしながら口にした。
「うん。俺と一緒に釣りしましょ」
ユウが「よろしく」と微笑んだ。
なんで俺、ドキドキしてるんだろう? と、ミツキは一拍遅れて思った。
*
提供されたママチャリを漕いで港まで向かうと、汗だくになった。
堤防の端で、潮風に吹かれながら日焼け止めを塗りなおす。クーラーボックスに入れていたペットボトルの水を飲む。しばらくするとこのクーラーボックスには釣った魚が入る予定なので、キンキンに冷えた水を飲めるのは今だけの贅沢だ。
ぷはー、と満足の息を吐いて、陽射しを弾く海を見つめる。
隣に立つユウが、「俺、カナヅチなんだ」とつぶやいた。
「俺は一応、泳げますけど……ライフジャケットも着てるから、大丈夫じゃないかな」
そう応えながら、素直に弱みを見せてくれるようになったんだと思うとうれしかった。
「水泳やってたの?」
ユウが尋ねる。ミツキはわざと遠い記憶を探るようにして答えた。
「んー……中学では水泳部でした。先輩にいじめられて辞めちゃったけど」
プールに沈められて、どんなに抵抗しても離してもらえなかった。顧問に相談しても「ふざけてるだけ」と一蹴された。今でも長い時間、水に潜るのは怖い。
ぽつぽつと語ると、ユウは「そいつら、最低だな」と吐き捨てた。
それで、ユウに触られたときも同じように怖かったことは伝えなかった。
ユウが自分のために怒ってくれたことで、あのいじめと昨日のできごとは違うんだとわかったから。
長袖のウィンドブレーカーを羽織って、帽子をかぶって、折り畳みの椅子やバケツをセットする。ここまでふたりはママチャリで来たけれど、大量の荷物はさすがにスタッフが運ぶのを手伝ってくれた。
「オキアミって独特な匂いだな」
「『おいしそう』と『くさい』のあいだの、めちゃくちゃ『くさい』寄りって感じですよね」
「それ」
「針いっぱいついてるから、リール絡まないように気をつけて」
仕掛けを投げ入れたあとは、糸をゆっくり巻き上げたり、竿を上下させたりして、撒き餌で魚群を呼び寄せる。「想像よりも忙しい」とユウは言ったけれど、それでも待つ時間が長い。
話ができるかなと思った。
仲直りはしたつもりだけど、カメラの前でしたわけじゃないから、視聴者のユウへの誤解はまだ解けていないはずだ。自分たちが仲良く話をしている姿を見せれば、伝わるものがあるかもしれない。
だけど、自分を偽って演技をしたいわけじゃない。ユウもそれは嫌がるはずだ。
訊きたいことを訊こう。
「ユウさんって……」
「あのさ、敬語じゃなくていいよ」
出鼻をくじかれた。ユウは、ちょっといたずらっぽく笑って続けた。
「昨日の喧嘩のとき、タメ口だっただろ? あっちのほうがおまえの素っぽくて、安心する」
「安心?」
「いい子ちゃんのおまえにも、性格悪いところあるんだなーって」
やっぱり意地悪だ、見直して損した。ミツキは、むうと唇を尖らせた。
「ユウさん……じゃない。ユウってさ。俺のこと、まだ嫌い?」
ユウは即答した。
「嫌い」
「えっ」
思わず糸の先から目を離して、ユウの顔を見てしまう。ユウもこちらを見返して、「ふふ」と笑った。
「嘘だよ」
「嘘はつかないって言ったくせに」
「だから本当のことを教えてるだろ。……そうやって、なんでも真正面からぶち当たってみるところ、嫌いじゃない」
長い前髪の下で、ミツキの姿を捉えた瞳が細められる。それは、どこかいとおしげな眼差しだった。
胸がぎゅうとした。
どうして俺をそんな目で見るんだろう。ユウに顔がかわいいと言われたことはあるけれど、こんなのは、まるで……。
ミツキは海面に視線を戻す。次の質問を考えて、心臓の鼓動が速くなる。一度、意識して鼻から息を吸った。
なによりもいちばん、知りたかったこと。
「あのさぁ……ユウって昔、動画配信やってたこと、ある? 『歌ってみた』とか、アップロードしてたり……」
ようやく訊けた。カメラの前だから曖昧な表現になってしまったけれど、ユウにはなにを訊きたいのかわかったはずだ。
答えの返ってくるまでの一瞬が、永遠にも思えた。ドキドキして、竿を握る手が震える。
「あるよ」
ミツキは、ふたたびユウを見た。潮風が頬を撫でていく。ユウは間髪入れずに「嘘だよ」とまた言った。
「ネットに歌をあげたことは一度もない」
だけど、その表情でわかってしまった。見ているこちらがまぶしくて目を逸らしたくなるような、やさしい笑顔。
やっと会えた。
【配信コメント】
ハグ長くね?
なに話してるんだろ
〈コメントは削除されました〉
マイク音拾えよw
下ネタw
ルイくん冴えてる
ミツキくん、コミュ強ぽいのにいじめられてたんか…
ユウ、ツンデレにも程がある
ユウVSinger説、違ったじゃんw

