君と幸せなサヨナラをしよう。

好きな人が自分を向いていないことの苦しさが、どれほどのものなのかを、知っているから。


「すずちゃんのこと応援するとか言っといて矛盾してるけど、本当はずーっとすずちゃんが羨ましかった。先輩と連絡先交換してたのも、デート誘われてたのも、名前呼びなのも、他の人より距離が近いのも、全部全部……あたしだったらいいのにってすっごい妬ましいよ」


ぶわっとどす黒い感情が薄桃色の唇から噴射されて、それを浴びた私の手足は硬直する。

それは思うように働かない思考回路まで侵食されているようだ。


ぎゅっと唇を噛み締めて眉間に力が入る。

きっとしろっきーも同じ顔をしているに違いない。


「……」

「……」


しばらく沈黙が続いた。

切ないピアノの旋律に重なってバイオリンのビブラートが揺らぐBGM。

平日のど真ん中の夜だから客足は少なく、店内には私たち以外に一組の男女と独りの男性だけの静かな息遣い。


ザアアァーー…とわずかに聞こえる雨の音と、車に轢かれる雨粒たちの悲鳴。