君と幸せなサヨナラをしよう。

カートを押して次々と担当する病室を回って、最後に君の個室のドアを叩く。


「失礼しまーす、回診でーす」

「あ、こんにちは……、今寝ちゃってて」


休憩前に面会受付した女性が小さな声で微笑む。

まだいたんだ、という感情は表に出さず私も高い小声で返事をする。


「そうなんですねー、では点滴だけチェックしてまた後ほどバイタル測定に伺いますね」

「はい、お願いします……くすくすくすっ」

「ふふふっ」


無防備に寝てる人の周りでこそこそ喋るのが何だかおかしくて、思わず女性と声を殺して笑い合ってしまった。

点滴スタイルに掛けたバインダーを取り、ペンでチェックを入れていく。


ふと女性がまじまじと私を見つめてることに気づいて、どうしましたか?と目で尋ねる。



「……もしかして、鈴木ハナさんですか…?」

「えっ」


びっくりしてペンが手から滑り落ちそうになるのをバシッと抑えてしまい、大きな音が鳴った。