神経を張り詰めると時間が過ぎるのは寸秒で、あっという間に日が暮れた。
「鈴木さーん、」
残務を仕上げてさあ帰ろう、というところで、先輩に呼び止められる。
「は、はーいっ」
手に掛けた更衣室のドアから急いで離れ、声の主のもとへ駆け寄る。
「ごめんごめん、帰るとこだったよな」
「いえ、大丈夫です!」
「これだけお願い、入力のダブルチェック」
「了解です!」
マニュアル通り指差し確認しながら復唱する。
合間、ちらっと先輩の顔を伺う。
九堂先輩。数少ない男性看護師の一人。
コワモテだけど実は優しくて、困ったときはすぐ助けてくれる頼りになる先輩。
彼女もいないらしいから、密かに女性看護師から人気なんだって、しろっきーが言ってた。
「おっけー、ありがと鈴木さん。お疲れさま〜」
「とんでもないです!では、お先です」
「ねえ、今日もしかしてこれ?」
「えっ」
九堂先輩は、私が今朝しろっきーにやった演技みたいに、手を口元に寄せてクイッと傾ける。
な、なぜかバレてるっ…!
