君と幸せなサヨナラをしよう。

慌てて応答すると、容態が急変した患者さんのヘルプ要請だった。


「じゃあ私はこれで!早めに寝てくださいね」


おやすみなさい、と早口に伝え、急ぎ足で部屋を出る。

先ほどまで静かだった廊下は少し騒がしく、近くの病室からモニタの警告音と看護師の呼び掛け声が響いている。

回診カートを端に寄せ、音のする方へ向かって走った。


それを皮切りに、深夜の病棟はあちらこちらでナースコールが鳴り、いつもの忙しい深夜帯になっていた。

そうしてバタバタな仕事をせっせと消化していたら、あっという間に夜が明けた。


「おはようございまーす」


各病室に朝食を配膳する。

窓際の部屋の開かれたカーテンから、キラキラと朝日が差し込んでいる。


……ちゃんと眠れたかな。

ふと思い浮かぶ、暗がりの中の君。

あのときは気にしていなかったけど、窓のカーテンは開いていた気がする。

そうか、月だ。
君は昔から、満月の夜はなぜか眠れないと言っていた。