君と幸せなサヨナラをしよう。



「しょーくん、今まで…ありがとう」

「こちらこそ」

「……お幸せにね」

「……うん」



お幸せに、なんてバカみたいだ。

こんな大人びたこと言ったって、内心は“別れたくないよ”って叫んでるんだ。

どうして好きじゃなくなったの?
嫌いになった原因を克服すれば、また私を好きになってくれるのかな。

また寄りを戻せる可能性はあるの?
全部努力するから、もう一度はじめからやり直そうよ。

ああもう、
ぜんぶぜんぶ無かったことにして、
時間を巻き戻せたら……。


……なんてね、

今日も、何度も、願ってしまう。


別れた日の、君の顔を、はっきりと覚えている。

忘れられない。忘れられるわけがない。

ひどく冷たく悲痛に歪んだ表情なのに、皮肉なほど整った顔立ち。

それを見ると、息が詰まって、何も言えなくなった。

もう、その冷艶な瞳が、私を映すことなんて無いんだろうな。



……────目を開ける。

手をのばして、温かい霧に浮かぶ君の残像をつかむ。

当たり前に、掴めるはずがなかった。