君と幸せなサヨナラをしよう。



「……だめだめ、メイクだけでも落とさなきゃ」


油断したら“あの日”を思い出して動けなくなっちゃう。

閉じそうなまぶたをこじ開けて、重たい体を無理やり起こして。

日曜日だからまだ寝ている家族を起こさないように、そっと部屋を出てお風呂場へ向かった。


お風呂場まで来たのに化粧を落とすだけじゃ、ここまで来れた気力がもったいなくて、結局シャワーを浴びてしまう。

そして目の前に広がるお湯の誘惑に負けて追い焚きボタンに手が滑り、気持ちいいから長風呂しちゃう。

ここまでが大体ワンセット。


「ふう」


脚を伸ばしてバスタブに置くと、ちゃぽん、と水の吐息が、立ち込める湯気にまぎれて消えた。


目を閉じる。

私はこんなにも未練がましい女だったんだと卑屈になる。

だって暗闇の中で考えるのはいつも、忘れられない君との思い出だらけ。