君と幸せなサヨナラをしよう。

いても立ってもいられなくて歩き出す。

先輩も並んで歩き出す。


そういえば雨は止んでいて、道路は湿った絨毯みたいになっていた。

その絨毯に建ち並ぶ街頭や居酒屋らの光が散って、歩くたび水の跳ねる音が鳴る。

ピチャピチャ、ふたつの水音が夜の静粛に吸い込まれてゆく。



「ねぇすずちゃん、」


先に沈黙をやぶったのは九堂先輩。


「はい」

「僕のこと九堂じゃなくてユーノスケでいいよ」

「え、」


たしか九堂先輩のフルネームって……。

シフトボードの名簿を必死に思い浮かべる。
えーっと、あ、九堂優之介(ゆうのすけ)だ!


「ゆ、優之介、先輩……、なんか長くなっちゃいますね」

「はははっ、たしかに。んー…、じゃあ略してユウとか?」

「ユウ先輩!呼びやすいですっ」


く、ど、う、せ、ん、ぱ、い、という7文字に比べたらゆー、せ、ん、ぱ、い、の方が呼びやすいしいい響き。