君と幸せなサヨナラをしよう。



 * * *



「よく頑張りましたね。明日から一般病棟に移って、経過観察しながらリハビリしましょう」


ようやく。その一言に尽きる。

大量に血を吐いた日、ついに死ぬのかと思った。

遠のく意識のなか、これまでの人生の走馬灯が駆け巡り、最期に見えたのはハナの泣き顔だった。


やっぱり忘れなくてよかったと思った。

最期くらい、愛しい人の顔を想って死にたい。



しかし俺はそう簡単に死ななかったようで、一命を取り留めた。

とはいえその後は、苦行の治療に挑み、心身疲れ果て、何度も限界を目の当たりにし、生きた心地はしなかった。

当たり前に外出禁止、厳しい面会制限や持参物の制限、来る人は皆ロボットみたいな防護服で必要最低限の接触。

腫れ物に触るような扱いをされているみたいだった。


生きるのをやめたいと思った。

でも、泣いているハナの前では死ねないとも思った。

最期くらい、愛しい人の顔を想って死にたいけど、
それは泣き顔じゃ嫌だと思った。


とことん欲張りな男だと、自分に呆れた。