「あら、ハナさんっぽい人がいるわよ。お昼かしら、お弁当食べてるわ」
そう言って蘭は窓ガラスから中庭を見下ろしている。
俺の昼食時間はとっくに過ぎているけど、ハナは今ごろ昼休憩に入っているのか。
「看護師って大変そうだな」
「そうね。……ん?もう一人の看護師さんもやってきたわ」
「……どんな人?」
「んー、たぶん男の人かしら」
「……」
12階から見えるのは限界があるけど、性別くらいはわかるらしい。
蘭は目を細めて実況を続ける。
「あらあら、あんなに堂々と頭なでちゃって……仲良さそうよ、あのふたり」
「……」
「あ、ハナさんどっか行っちゃった。照れちゃったのかしら。うふふふっ」
「……」
「あらやだ、男の人も頭抱えてる。かわいいわねぇ、大胆なことしたわりには照れ屋さんなんだからっ」
くすくす他人の恋愛寸劇を楽しんでいる彼女が、どこからどう見ても悪女にしか見えなかった。
