君と幸せなサヨナラをしよう。


べたべたお互いの腕を叩き合いっこしながら、ゆらゆら夜の波に身を任せてゆく。

宙に浮いたような感覚のまま、このまま……君のところまで、たどり着けたら、なんて。


どこまでも飛べたって行けるわけがない。

だったらいっそ、まっくらな海底の、さらに砂の奥底まで沈んでいけば、この痛みも悲しみも全てを忘れられるのかな。


きっとしろっきーも、こんな気持ちを味わったことがあるんだ。

失恋って、好きであればあるほど、それに比例するように酷くこころがダメージを受ける。

だからこんなにも私を励ましてくれるし、新たな恋のアクセルを踏めるよう手伝ってくれている。


うれしくて、でも、切なくて。

次に踏み込んでしまったら、もう、君の想い出も記憶もかすれていつしか消えてしまいそうで。

怖かった。

まだ、忘れたくなかった。




「焦る必要はないですよ」


ジョーさんを見上げる。

サービスです、と差し出されたカクテルは不透明な明るいオレンジ色をしていた。