「──次の回診行かなきゃだから!じゃ」
そう言ってカーテンが波打つ合図で、咄嗟に手が伸びる。あの日のように。
……待って。行かないで。
その願いは、枯れた喉に、潰された。
ゲホゲホと咳き込む俺の肩から手を入れ、ゆっくり上体を起こし、背中を優しくさする看護師のハナ。
そこにいるのは、恋人ではないハナなんだ。
何をやってんだ俺は。
自分から離れておきながら、行かないでなんて言う資格もないのに。
ああ、こんな情けない姿を晒して。
なんで今なんだよ。
なんでこんな状況で会ってしまうんだよ。
不運にもほどがある。
「こんな形で再会するとか最悪」
弱った俺を見られたくなかった。
病気だとばれたくなかった。
再会するくらいなら、死んで、生まれ変わって、もう一度はじめからやり直したかった。
はじめから。
初めて出逢った日から最後に別れた日までの記憶が頭の中で早送り再生される。
笑ったり泣いたり怒ったり寄り添ったり。
そんな鮮やかな日々なんて、もう。
