君と幸せなサヨナラをしよう。

けれど擦り傷を繰り返せば、やがて深い(みぞ)となる。


こころの洫が鏡となったかのごとく、俺の内蔵にも大きな腫瘍があったらしい。

食欲はわかない。
水も飲みたくない。

そのせいで喉が乾燥しているのか、咳が止まらない。



ガラガラ……と慎重にドアを開ける音がした。

月灯りだけが頼りの真っ暗な部屋に、回診です、というひそひそ声と忍び足が近づく。


この声…聞き間違えるわけがない。

一瞬夢かと思ったが、試しにぐっと舌を噛むと痛かった。


暗闇の中でハナはてきぱきと看護師の仕事をこなしている。

つい目が離せなくなっていたら、パッと明かりを向けられ、寝たふりしていなかったことを後悔した。



「……ハナじゃん」


互いの視線がぶつかり動かないハナは、ぷは、と窒息寸前みたいな息継ぎをする。


今さら敬語で話してくるし、天然というワードに過剰反応するし、ほんと揺るがねぇやつだと思った。

それと同時に、込み上がってくる懐かしさ。