「しょーくん、今まで…ありがとう」
豪雨の爆音よりも彼女の囁き声のほうが不思議なくらい耳によく入る。
「こちらこそ」
「……お幸せにね」
「……うん」
3年と5か月。
俺たちの関係は、
積み重ねてきた月日には見合わないほど、
あっけなく終わりを告げた。
雨が止む気配はなく、濁流の勢いを増すばかり。
突然その中を駆け出す彼女にあっと手が前に出たが、届かず容赦ない滝に撃たれるだけだった。
こころが張り裂けそうで不意に胸を抑える。
目頭が熱くなり溢れる感情をせき止められなくなった縁からぽろぽろ生温かい水滴がこぼれた。
「っ……」
遠ざかってゆく後ろ姿。
お前と出逢えてよかったよ。
お前はこんなにも俺を悲しませたり、苦しませたり、悩ませたりしてくれた。
そして、それ以上に、
他では満たせない沢山の幸せをくれた。
そんな、愛する日々と、サヨナラをしよう。
俺にはもう、守れないなら。
左様なら、二度と誰かを愛することなど、できない。
「サヨナラ」
震える声は、透明な雫に混じり、濡れた地面へ落ちた。
