君と幸せなサヨナラをしよう。



その目は大きく見開かれる。



「……え?」



なんで、どうして、何を言ってるの、どういう意味、
そんな感情を滲ませた目が、震える睫毛に囲われている。


その押し寄せる波をせき止めるように、
冷酷で残虐で濁りきった嘘を吐く。


「俺、もうハナのこと女として見れない」

「そ、んな……、」


彼女の絶望的な瞳が透明の膜を張る。

見るに堪えなくて目を背ける。


雨は激しさを増していた。



「ごめん、だから別れて」



俺から離れて、どこかへ。

お前を守れる強いところのもとへ、行ってくれ。



「……」

「……」



お互い、黙り込む。


二人の空間だけが別世界に密封されてしまったように、
静寂に包まれた。



寸秒か永劫かわからないほどの間隔の後。



そっか、と雨音にかき消されそうなくらい小さな掠れ声がして、前を向き直す動作をしたのをなんとなく感じる。