君と幸せなサヨナラをしよう。



治療開始の1日前。

5月の末の空は気持ち悪いくらい晴れ晴れしていて、燦々と輝く太陽は道行く人々の行く先を明るく照らしていた。



「……──しょーくん、聞いてる?」


顔の前でぶんぶん手を広げる彼女に意識を戻される。

大きなショッピングモールで彼女の買い物に付き合ったあと、カフェのテラス席でひと息ついていたところだった。


心配そうに俺を見つめる大きな丸い双眸は艷やかで、美しくて、目を細めたくなるほど眩しい生命力を感じた。


「……ごめん、何だっけ」

「しょーくん疲れちゃった?いっぱい連れ回しちゃってごめんね」

「いや、全然大丈夫だよ。ハナは元気だなって思ってただけ」


視線を落としてアイスコーヒーをすする。


生き生きした彼女とは正反対に、俺の身体はどんどん病に蝕まれ衰えていくんだ。



ぬるい風が素肌を撫で、コップにもたれるストローの穂先をわずかに揺らす。

春がもうすぐ終わりを告げそうだった。