何かの間違いだったらという淡い期待は見事に裏切られた。
あるのは現実をただ受け入れなければならないという拷問。
それからカウンセラーとの面談やら家族との話し合いやら治療の準備やらで周りが慌ただしくする中、俺はただ茫然と過ごすことしかできなかった。
治療は毎日病院で数十分ほど放射線を当てる必要があり、まずは3週間実施することになったらしい。
治療開始の2日前、自室の机に座って書類を整理していると、ふと本棚に置かれたふたりの笑顔の写真立てが目に入った。
2回目の記念日に旅行で水族館へ行った時に撮ってもらったもの。
そっと彼女の笑顔を撫でる。
「……」
彼女にはまだ話していないし、話すつもりもない。
こんなお荷物は背負う必要なんてない。
この先、俺の人生は暗くて苦しいことしか待っていないはずだから。
不透明な俺との未来より、もっと鮮明で耀く道を歩んでほしいから。
だから、彼女を愛するのは、終わりにしよう。
ぱたん、と、写真を伏せる静かな音が、
沈黙のなかに響いて消えた。
