うむ。なるほど。

次の日からは、毎日の日課の中にモデッツ先生のお勉強の時間が増えた。
後宮から帰ってきた三時頃から始まるその時間は、当初は一時間の予定だったのが、俺が優秀過ぎるあまり、二時間に増えてしまった。
そして、最初に渡された大量の自学自習用教材。
俺の自由時間は、完全にお勉強の時間に消えた。

でも、別に苦では無かった。
モデッツ先生は思いの外、面白い先生で、子供に教えるという事に慣れていた。

流石の俺も、子供の身体に引き摺られてか、二時間ずっと椅子に座っているのは苦痛だった。
モデッツ先生はちゃんとそれを分かっていて、お茶の時間を挟んだり、立ち上がって身体の構造の勉強に移行したり、窓から外を見ながら地形の話をしてくれたり、何かと立ち上がる機会を作ってくれた。

椅子に座り過ぎると寿命が縮むとか言う話もあったし、子供の目は特に遠くを見ないと悪くなるって言うもんな。素晴らしい配慮です。先生。

今日も、遠くの山を指しながら、あの山の向こうにこの国一番の商業都市があって、と説明してくれる。
非常に興味深い話だ。
王宮に籠っていては分からない、この世界の話。

北の端国(はしくに)はジャガイモの大農園が広がっていて、そこから送られてくるジャガイモで俺のお菓子が毎日おいしいとか、メイレンの出身国の東の端国(はしくに)に行くには急峻(きゅうしゅん)な霊峰(れいほう)を越えなければならず、今でもほとんどの国交が出来ていないとか、リルの出身国の南の端国(はしくに)は情熱的な人が多くて、訪れる度に宴会が開かれるとか。

役に立つのか立たないのか。
でも、きっと大切な事をたくさん教えてくれる。

モデッツ先生の助手は、俺に直接話しかける権利を持っていないらしく、俺が直接聞こうとしても必ず間にギンナン少年が入ってくる。
非常に面倒だが、モデッツ先生にそういうものだと弁(わきま)えなさいと言われたので我慢だ。
それにしても、名前くらいは教えてくれても良いだろうに。名乗る権利もないらしい。
王族っぽいなと一時は燥(はしゃ)いでたが、やはりこういう決まりは面倒だ。

五時ごろにモデッツ先生が帰って、六時に夕ご飯の時間になる。
そこで、ギンナン少年とユハが交代する。
ユハはモデッツ先生の事を知っているらしく、勉強の話を聞きながら懐かしそうにしている。

聞けば、モデッツ先生は騎士訓練科で基礎の勉強を教えてくれる先生らしい。
ユハも去年まではモデッツ先生に教わっていたという事だ。
そして、モデッツ先生に教えることが無いとお墨付(すみつ)きを頂くと、騎士予備科に進級できるという仕組みだ。

騎士になろうかという子供に基礎の勉強を教えていたとなると、子供相手の教え方が上手い事にも納得できる。
さぞ、落ち着きのない子供たちに苦労してきたことだろう。