うむ。なるほど。

「何か、指導を受ける楽器を選びますか?」

ちょうど楽器鑑賞にひと満足した所で、ユハが声をかけてくる。
タイミングがいちいち素晴らしい。

「ん~、そうだな。どれも楽しそうだが。折角だから、カツィの隣で練習出来たら良いかも。わざわざ会いに行っても、俺には何も出来ないけど、音楽聴かせるのって赤ん坊にも良さそうじゃん。だから、あんまり音が大きくないのがやりたい。」

泣いている赤ん坊が苦手だからって、避けてばかりじゃダメだし。
母親も父親も会いに行かないのなら、俺だけでも会いに行ってあげたい。

「素晴らしいお考えですね。赤ん坊の側で練習されるのなら、ルビーラが宜しいかと思います。あれは、マレットの周りに布を巻くと更に音を軽減できますし、多少の音は赤ん坊にもいい影響があるのでは無いかと言われておりますから」

ルビーラというのは、ほぼ木琴のやつだ。確かに、俺の知っている木琴よりも優しい音が鳴っていた。マレットの先ももっと柔らかい素材に変えられそうだったし。
ユハを見たら、微笑んで頷いていた。大丈夫だそうだ。

「でも、ルビーラだとちょっと大きいよな。小さいのとかってある?」

家で遊ぶタイプの木琴じゃなくて、ちゃんとした木琴。下に共鳴管がたくさんついているやつだから、持ち運ぶにはちょっと大変そうだ。
教えてもらう時には俺の部屋で使って、練習する時にはカツィの部屋で使いたい。二つ買うのも良いが、それはそれで邪魔になりそう。

「はい。共鳴管をつけていないものも御座います。板を工夫して、共鳴管が無くともある程度の音が響く構造になっております。ですが、赤ん坊の側で演奏される時には、あまり共鳴しないものの方が良いかもしれませんね。」

確かに。
赤ん坊の側で練習するなら響く必要はないな。
部屋で練習する分には、場所は取るけど共鳴管が付いている物。赤ん坊の側で練習する分には、共鳴しないコンパクトな物が良いかもな。

「では、普通のルビーラを一つと、響きの少ない持ち運び用のルビーラを一つ。お願い致しましょうか。それと、ルビーラの指導者を週に一度、派遣して頂きましょう」

ユハがまとめて、楽器の購入と俺の人生初(じんせいはつ)の習い事が決定した。
俺がユハにうんうんと頷くと、ユハが懐からキラキラした硬貨を取り出した。
楽団の彼も淡々と書類を取り出して、楽器名と金額を記入する。

「ルビーラ一つが金貨三枚、小さなルビーラが金貨二枚です」

いや、当たり前の流れではあるんだけど、いきなり生々しい話になった。
と言うか、俺、貨幣(おかね)の価値を全く知らなかったわ。
金貨って何か凄く高価そうだけど、円で言うとどれくらいなんでしょうか?
いきなりのお金のやり取りに、めちゃくちゃドキドキしてきた。

「指導者の派遣は一回で銀貨五枚です。最初の指導はいつ頃に致しましょうか」

一回の指導(レッスン)が銀貨五枚。
多分、銀貨十枚で金貨一枚とかだよな。
そうだとすると、まぁ、プロに教えてもらって一回五千円だとしたら。
金貨三枚は、三万円?それはちょっと安すぎるか?

じゃあ、銀貨百枚で金貨一枚だとしたら。
金貨三枚は三十万円?ん~、どうなんだろ。
まぁ、そんなもんなんかな?

「金貨は銀貨百枚分。銀貨は銅貨百枚分。日雇いの日給は銅貨五枚分ほどじゃ」

メフィスレスは貨幣価値にも詳しいらしい。
日雇いが銅貨五枚。五千円とか?だとすると……
銅貨百枚で銀貨一枚だから、千円の百倍は、十万?
え、指導(レッスン)一回50万?!さすがプロだな。
で、銀貨百枚分が金貨一枚だから、十万の百倍で……

え?は?いや。ルビーラ二つで、ご、五千万?!